2008年6月3日火曜日

無形資産のまとめ

無形資産についてインターネットにある情報をまとめておく

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http://m-words.jp/w/E784A1E5BDA2E8B387E794A3.html
無形資産

物的な実体を伴わない資産。

特許や商標権、著作権といった知的資産、
従業員の持つ技術や能力といった人的資産、
企業文化や経営管理プロセスといったインフラストラクチャ資産
などがこれに含まれる。実体を伴わないことから無形資産の評価は難しく、バランスシート(賃貸対照表)には計上されにくいため、バランスシートから企業の真の価値を知ろうとすることは困難であるといえる。よって企業の真の価値を見出すには、より正確に無形資産の評価を行わなければならないということである。

無形資産を評価する方法には、
ブランドや特許に関する収入を予測して評価するインカムアプローチ、
対象の無形資産と同じ無形資産を取得する場合に要するコストに基づいて評価するコストアプローチ、
商標権に関する利益指標による倍率を利用したり類似ライセンス契約に基づくロイヤリティー料率を利用して評価するマーケットアプローチ
などがある。ここでロイヤリティーとは特許権や著作権の使用料のことである。

無形資産とは逆に、
土地や家屋などの不動産、
現金や有価証券など
実体を伴った資産を「有形資産」という。

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http://www.mitsue.co.jp/case/glossary/m_033.html
無形資産

現在のバランスシート(貸借対照表)は企業の正しい価値を伝えていないと言われます。工場、設備、在庫、運転資本などの評価額の合計では、企業の真の価値は計れないからです。
無形資産とは、企業の真の価値を形成する、バランスシートに計上されていない価値のことを指します。
例えば、
ブランド価値、
顧客の価値、
社員の価値、
知的資本の価値
などがそれに当たります。

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http://www.kpmg.or.jp/resources/keywords/tax_intangible.html
Intangible Properties

無形資産

無形資産の定義については、例えば、
知的財産(特許権等技術、生産方法等)、
人的資本(熟練労働者の能力等)、
組織価値(ブランド、ビジネスモデル、マーケティング力等)
のように大別されることが多いが、その指し示す範囲等については、
会計や
税務
等分野によって異なる。

なお、会計分野においては、
企業結合会計上、分離可能な無形資産について個別に認識・評価する必要が生じてきている。

また、移転価格税制においても、
無形資産取引に関する議論が近年活発に行われており、税務当局と納税者との間で大きな議論となっている分野でもある。

移転価格税制における無形資産取引の具体的論点は、
(1)無形資産取引の範囲、
(2)無形資産所有者の特定、
(3)無形資産の価値評価、
(4)無形資産に係る独立企業間価格の算定、及び
(5)無形資産の使用許諾の開始(或いは譲渡)の時期の把握、
に大別できるが、
特に無形資産譲渡時の譲渡価格の算定および
当該無形資産のロイヤリティ料率の算定
(例えば
ブランドロイヤリティや
技術ロイヤリティ等)
等においては十分な検討が必要である。

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http://www.kpmg.or.jp/serviceline/financialadvisory/valuation/tax02.html
無形資産の価値算定の必要性

情報化社会の進展、産業の高付加価値化といった「経済環境の変化」、さらには事業再編・M&Aの機会の増加、ブランド競争力の重要性の増加、無形資産・ポートフォリオの概念の導入といった「ビジネス上の要請」に伴い、無形資産の価値が注目されるようになり、かつ、その価値を算定する機会も近年増加してきています。売買等の資産移転時における価格の決定のみならず、無形資産の使用許諾に伴うロイヤルティ料率の決定等においても、無形資産の価値算定を適切に行うことが求められています。

無形資産の取引価格を適切に設定することはビジネス上も重要ですが、税務・会計上も合理的かつ客観的な算定根拠が求められます。税務面においては、不当に売却価格が安いもしくは購入価格が高い場合、適正価格との乖離分に相当する「寄付金」の授受があったものとして取り扱われることとなります。又、無形資産の売買が国外関連者との間で行われた場合、移転価格税制の観点からも問題となります。一般的に、無形資産の価格は高額になることが多く所得更正された場合、企業に与える影響はその他の資産の取引と比較した場合より大きなものとなる可能性もあります。

一方、会計面においても、近年FASB(米国財務会計基準審議会)により営業権(暖簾)の減耗テストが導入されるなど、無形資産の客観的かつ合理的な算定がより重要視される傾向にあります。

KPMGでは、無形資産評価事案の豊富な経験及び専門知識を有するプロフェッショナルを擁し、価値算定の目的に応じて以下のプロセスに準じた手法を用い、企業にとって最適な無形資産価値算定アドバイザリーサービスを提供します。


無形資産の価値算定手法

主に以下に紹介する手法を用いて無形資産の価値算定を行います。

●マーケット・アプローチ

対象となる無形資産と類似比較可能な無形資産の独立第三者間における取引価格、ロイヤリティ料率をはじめとする無形資産の使用に係る対価を参考として、無形資産の価値を算定します。当該アプローチにおいては、対象となる無形資産と比較対象となる無形資産について、その性質や使用する状況等の無形資産を特徴付ける要素について充分な比較可能性が求められるため、実務上適用が困難な場面もあります。

●コスト・アプローチ

評価対象となる無形資産と同様の無形資産を評価時点において再調達もしくは新たに再構築する場合に要する費用を基準にその価値を算定する手法です。なお、過去の費用を基準とする場合、算定された費用の総額から物理的減耗、機能的陳腐化、経済的陳腐化等による価値の減少部分を控除する必要があります。

●インカム・アプローチ

無形資産を使用することによって得られる将来の経済的便益を現在価値に換算しそれらの現在価値を合計することにより、無形資産の価値を算定する方法です。当該手法の適用にあたっては、キャッシュフローの算出、および当該キャッシュフローを現在価値に割り引く際に用いられる割引率をいかに適切に算出できるかがポイントとなります。


プロジェクトのプロセス

価値算定プロジェクトは主に「事実及び機能・リスク分析」、「評価手法の選定、評価モデルの構築、価値算定」、「算定価格の検証」の3段階のプロセスを経て行われます。

(1)「事実分析、機能・リスク分析」

評価の対象となる無形資産について、関係する当事者の業務内容や使用状況、当事者間におけるロイヤリティ取引等といった、無形資産に係る取引内容の確認および財務データの収集等を行い、事実、および機能・リスクに関する分析を行います。公開情報の収集も平行して行います。

(2)「評価手法の選定、評価モデルの構築、価値算定」

事実、機能・リスク分析に基づき適切な評価手法を選定します。更に無形資産とそれを活用するビジネスとの関係をふまえて、評価モデルを構築します。同時に分析に必要となる財務及び市場データを収集し、構築された評価モデルに基づき対象となる無形資産の価値算定を行います。

(3)「算定価格の妥当性の検証」

算定された評価額の妥当性について、関係者とのディスカッション及び前提条件との整合性の確認等により検証し、最終的に合理的な価値(又は価値範囲)を算定します。又必要に応じ、無形資産の取引形態の違いによる損益の変動に関するシミュレーション等も行います。

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http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/05050001.html
無形資産の理解の枠組みと情報開示問題


執筆者 刈屋武昭 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2005年05月 05-J-019
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概要
本稿の狙いは、リスクアプローチによる企業の無形資産の識別法・測定法の開発と情報開示政策について議論を展開するための基礎的枠組を整理すること、無形資産による企業の価値創造プロセスを理解すること、その理解の視点から情報開示政策のあり方の考え方を模索することである。すなわち、企業の価値創造における不確実性(リスクと機会)と無形資産(インタンジブルアセット)の関係の理解の仕方と無形資産測定と価値評価についての概念的な枠組を求め、その理解の仕方と枠組の視点から企業無形資産に対する情報開示政策あり方を議論することである。キーワードは、価値を創り出すものと毀損するものとしての「知識とリスク」である。
ここで企業の価値とは、狭義においては将来の利益キャシュフローの現在価値(NPV:正味現在価値)であり、広義においては企業の活動に関係するステークホルダーの将来の価値のNPV全体である。資産は価値創造に貢献するものもしくはそう認識されるものである。 さらにリスクとは、企業の目的達成に影響を与え、将来の価値フローもしくは収益キャッシュフローに変動を与えるものをいう。価値は将来の不確実性に依存した確率的な変数であり、リスクは価値の下方への変動の大きさである。それゆえ価値とリスクはともにフォワード・ルッキングの視点に基づく事前的概念であることに注意する。
EU文書で記述されている無形資産へのアプローチは、知識・資源アプローチとして理解されるのに対して、研究プロジェクト全体としてはリスク・プロセスアプローチによる議論を展開する。本稿ではその基礎を議論する。

本文

RIETI Discussion Paper Series 05-J-019
無形資産の理解の枠組みと情報開示問題
2005 年5 月
刈屋 武昭
明治大学ビジネススクール教授
京都大学経済研究所客員教授
経済産業研究所ファカルティフェロー
要 旨
本稿の狙いは、リスクアプローチによる企業の無形資産の識別法・測定法の開
発と情報開示政策について議論を展開するための基礎的枠組を整理すること、
無形資産による企業の価値創造プロセスを理解すること、その理解の視点から
情報開示政策のあり方の考え方を模索することである。すなわち、企業の価値
創造における不確実性(リスクと機会)と無形資産(インタンジブルアセット)
の関係の理解の仕方と無形資産測定と価値評価についての概念的な枠組を求め、
その理解の仕方と枠組の視点から企業無形資産に対する情報開示政策あり方を
議論することである。キーワードは、価値を創り出すものと毀損するものとし
ての「知識とリスク」である。
ここで企業の価値とは、狭義においては将来の利益キャシュフローの現在価
値(NPV:正味現在価値)であり、広義においては企業の活動に関係するステーク
ホルダーの将来の価値のNPV 全体である。資産は価値創造に貢献するものもし
くはそう認識されるものである。 さらにリスクとは、企業の目的達成に影響
を与え、将来の価値フローもしくは収益キャッシュフローに変動を与えるもの
をいう。価値は将来の不確実性に依存した確率的な変数であり、リスクは価値
の下方への変動の大きさである。それゆえ価値とリスクはともにフォワード・
ルッキングの視点に基づく事前的概念であることに注意する。
EU 文書で記述されている無形資産へのアプローチは、知識・資源アプローチ
として理解されるのに対して、研究プロジェクト全体としてはリスク・プロセ
スアプローチによる議論を展開する。本稿ではその基礎を議論する。
- 1 -
無形資産の理解の枠組みと情報開示問題
刈屋武昭
明治大学ビジネススクール教授
京都大学経済研究所客員教授
経済産業研究所ファカルティフェロー
本稿の内容は今後継続していく研究プロジェクト
「企業価値創造と無形資産の測定と情報開示政策-リスクアプローチと展望」
第1部 無形資産の理解の枠組みと情報開示問題
第2部 知識アプローチによる無形資産の識別・測定と情報開示問題
第3 部 リスクアプローチによる無形資産の識別・測定と情報開示問題
の第1 部に対応する。
- 2 -
第1部 無形資産の理解の枠組と情報開示問題
本稿全体の狙いは、企業の価値創造における不確実性(リスクと機会)と無
形資産(インタンジブルアセット)の関係の理解の仕方と、リスクを考慮した測
定・価値評価の概念的な枠組を提供し、その枠組の視点から企業に対する情報
開示政策あり方を議論することである。この狙いに対して第1 部では、全体的
な視点から企業価値創造プロセスにおける無形資産の重要性、その特徴、価値
評価問題、情報開示問題について議論する。
1 全体的な視点
2 企業価値創造における無形資産の重要性
3 無形資産とリスクと価値創造
4 無形資産と経営プロセス
5 プロセスアプローチと価値評価問題
6 無形資産の情報開示問題
1 全体的な視点
本節では、本研究プロジェクト
「企業価値創造と無形資産の測定と情報開示政策-リスクアプローチと展望」
を展望した全体的視点から本稿での議論を展開するための準備をする。本研究
プロジェクト全体を通して、価値創造と知識とリスクの関係と情報開示の問題
がテーマである。
企業は進化を先取りして、変化の経営(チェインジマネジメント)、プロアクテ
ィブなリスク経営が要求されている。経営の将来の不確実性に対する分析と予
想に基づくプロアクティブな行動が企業を変えていく。リスクとリターンに関
する将来予想をする能力が経営に求められるのである。現在ある状況は、過去
の経営者の予想の結果である。企業の価値創造関数には、経営者のリスクとリ
ターンの将来予想値があるのである。「何もしなかった」ことによる経営の失敗
は「間違った予想」からの帰結である。ノーリスク、ノーマネジメントである。
1.1 2 つの基本文献
本研究プロジェクトの議論を展開する上で重要な文献は
A) EU 文書:Study on the Measurement of Intangible Assets and
Associated Reporting Practices, 2003 Presented for the
Commission of the European Communities Enterprise Directorate
General
- 3 -
B) COSO 文書: Enterprise Risk Management Integrated Framework,
2004 1)Executive Summary, Framework, 2)Application
Techniques, The Committee of Sponsoring Organizations of the
Treadway Commission(COSO)
である。本稿でも各所で引用する。
A)のEU 文書は、欧州委員会に提出された無形資産測定に関する研究調査報
告書である。そこではこの分野の専門家のグループが300以上の文献に基づき、
無形資産の多くの問題やサーベイ調査結果、あるいは実際に利用されている技
術など、最近の結果まできわめて包括的に取り扱っている。この文書の内容を
見れば、無形資産の研究調査の現状がわかるし、EU 委員会への情報開示政策の
提案やこの分野の全体的な展望も述べられている。その意味では日本の無形資
産に関する情報開示政策を探る上ではこの文書が最も基本的なものであろう。
この文書での無形資産を見る視点と基礎概念は「知識」であり、知識が価値
創造の源泉であるという視点から、主として政策当局の立場からいかに企業の
中の知識資産を外部への情報開示報告の対象として把握し、測定するか、とい
う議論を展開している。特に北欧で開発された知的資本のさまざまな報告書の
あり方と具体例について詳しい議論が展開されている。価値創造を取り扱うこ
れらの報告書の主な相違点は、知識の概念と、無形資産情報を開示するときの
指標選択の際のカテゴリーである。
EU の報告書7 章の結論部分では、無形資産の識別、測定、レポ-ティングの支援
と、その管理のための適切な情報基盤の構築が必要である、と提案している。そ
れは、強固な経済原理に基づいた、広く標準的で、部分的には強制的であるよう
な革新的なレポーティングの基盤である、として情報開示政策の必要性を説い
ている。
B)の文書におけるCOSO とは、米国公認会計士協会、内部監査協会、財務執
行役(CFO)協会、経営会計士協会、会計連合がつくる財務虚偽報告についての
調査組織であり、その文書は、2002 年にSarbanes-Oxley(SOX)法として成
立した米国企業改革法に対応した、経営の有効性を主張する経営の枠組として、
エンタープライズ・リスクマネジメント(ERM)の思考法と価値創造を狙う技
術をまとめたものである。したがって、それ自体無形資産の識別や測定を議論
するものではない。しかし、ERM それ自体経営プロセスの思考法と枠組を与え
るものであり、個別企業におけるそのインプリメンテーション自体がひとつの
経営プロセスとして最も重要な無形資産となりうる。加えて、SOX 法が経営コ
ントロールの有効性に対して厳しい経営者責任を課しているので、米国企業の
経営はこのCOSO の枠組に沿ったものになっていく可能性が高い。その結果、
米国の経営思考法の枠組(経営モデルの集合)は、COSO の文書が述べる8 つの要
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素を含んだERM モデルの集合として記述されるものとなっていく可能性が高
い、と判断される。
なお米国で上場する海外企業もSOX 法に従う必要があり、連結ベースで子会
社も含めた内部コントロールの有効性を示すことが求められている。たとえば
米国に上場する会社三井物産の子会社で、日本のみでビジネスを行う物産不動
産もその対応をし始めていた。しかし、その適用期限が1年延長になるという
ことで、少し時間的余裕が出てきたようだ。このようなこと自体その必要性に
疑問を抱かざるを得ない部分もあるが、加えてそのコンサルティングビジネス
を展開しているのは主として外資系であることも皮肉なことである。連結子会
社の概念により、米国の規制が日本に上陸して日本の企業システムを一部統制
しているのである。
1.2 本研究プロジェクトの立場
このような視点から本稿では、EU 文書にある無形資産の測定・開示問題を、
新しくリスクの視点から無形資産の識別、測定・評価、報告(情報開示)に関
する問題を扱う方法として、COSO の枠組を利用する。その枠組を利用して、
具体的な無形資産の識別、評価をリスクの視点から議論する。この点が新しい
提案である。本プロジェクトでの測定・評価問題を扱う立場は、きわめて企業経
営の立場に沿った内部的・主観的な側面が強い。それは、企業の価値創造機能を
高めるための測定・評価を基本に考えており、情報開示政策もこれを長期的に
支援することが重要であると考えているからである。
企業の価値創造能力が有形資産から無形資産にシフトしてきた背景には、成
熟社会の中で個人の価値観・嗜好が進化し、価値を作る商品そのものが無形物
の多様な複合体となってきていることが指摘される。そのため企業は自らの安
定的な成長をもとめて、社会が求める商品の探索やイノベーションを起こす人
材の確保、顧客や社会との信頼関係の構築のためなど、絶えず社会とのコミュ
ニケーションを続けていかざるを得ない。すなわち、企業の価値創造は結局の
ところ、企業が直接的なステークホルダーだけでなく社会全体とのコミュニケ
ーションを通して作られるものである。企業にとって情報開示はその手段であ
る。さらに企業の立場から、組織内部では、無形資産を認識し、その有効利用を
図り、相互に知識を共有して、組織資産として蓄積・刷新していく必要がある。
プロセスでは内部客観性が重要であるが、組織それ自体としてはビジョンや文
化に根ざした主観的な判断による経営とならざるをえない。国家の立場も企業
の価値創造能力が国際競争力である限り、この立場を尊重した情報開示のあり
方を開発していくことが望ましいであろう。
企業が自ら行う無形資産の情報を開示していく場合においても、そこでは主
- 5 -
観的に認識・測定・評価された無形資産の内部的な情報を外部に出す方式が重
要となる。それは企業のビジョンや文化に根ざした経営の視点からの情報であ
り、価値発生源はその全体的なものであって、部分的な顧客満足度などの指標
の集合だけではないのである。このような情報は、投資家や就職・転職を求め
る人、顧客などそれぞれの目的のために、さらに精緻な情報となろう。プライ
ス・クーパー・ウォーターハウス(PCW)は投資家とのコミュニケーションを情
報開示戦略として位置付けて、その最適性を議論している(Eccles,Herz,Keegan
and Phillips(2000),翻訳(2002))。
もちろん国の政策として日本企業の競争力の問題と、情報の非対称性の問題、
「無形資産の脆弱性により発生する企業倒産による負の外部効果(グリーンス
パン)」の問題に対応する政策を情報開示問題として位置付けることも重要であ
る。しかし問題はその政策のあり方であろう。この点に関しては本稿第1 部2
節で扱う。
本稿の無形資産についての資産認識は、企業の価値創造への貢献に関わるも
のとするが、その裏概念である「リスク概念」を利用する。リスクマネジメン
トは、価値創造に毀損をもたらす可能性を減少し、安定的な価値創造を狙う経
営である。実際、競争優位性をもつ事業や資産にたいしても、それを維持発展
させる目的から、それを毀損するリスク要因を戦略的に考慮して対応を図るこ
とによって価値を維持していくのである。その意味でバリューマネジメントと
リスクマネジメントはコインの表と裏の関係である。COSO の報告書は、「企業
全体のリスクマネジメント」としてERM の経営プロセスを明確な形で定式化し
ている。すなわちCOSO の枠組は事業経営も「リスクとリターンの関係」で把
握する経営モデルを前提に、その経営プロセスの有効性のあり方をモデル化し
ている。情報開示政策でもこの視点をすえる必要があろう。
1.3 戦略的経営は変化の経営
21 世紀の企業経営は、グローバル化、自由化、技術革新、高度の資本蓄積
を背景とした、新しい進化の環境に大きくさらされる。企業経営のコアコンセ
プトは、価値を創り出すものとそれを毀損するもの「知識とリスク」である。
進化に対応できない陳腐化リスクは企業にとって致命的となる。加速化する進
化への経営の対応として、価値とリスクの両面から考察することが重要である。
安定的な成長を狙う企業戦略の構築において、明確なビジョンとそれを実現す
る専門性の高い経営力による、変化の経営(チェインジマネジメント)戦略こ
そが経営の最も重要な機能となり始めている。そこではリスクの分析能力と有
効な意思決定能力が必要である。それこそが企業にとって重要な無形資産であ
る。
- 6 -
大きな進化を通して、企業の競争も激化する一方、知識・無形資産の有機的
な結合を目指した、協働や提携、ネットワーク経営、あるいは合併もさらに盛
んになっていくであろう。これが実は企業の戦略的リスクマネジメント(リスク
対応)である。企業の境界に束縛されないネットワーク経営など、有効な事業リ
スクポートフォリオ構築こそ知識とリスクの経済社会での戦略的経営に求めら
れるものである。その能力を作り出す人的資産の確保とその維持能力が経営力
となる。加えて、企業の境界としての貸借対照表の有形資産の所有権の枠を越え
て、サプライチェーンや顧客などステークホルダーと一緒に情報・知識を共有・
結合(ネットワーク)し、安定的な価値を作り出す能力も必要になっている。ウォ
ルマートがサプライチェーンネットのもとに安定的な価値の流れを作っている
ことは有名である。このような流れは、実は貸借対照表資産を基礎にした所有
概念を大きく変えていく可能性を持っている。そこでは新しく価値創造のプロ
セス全体の所有概念が問題となろうが、知力に関しては属人的な部分が大きい
のでその所有権を実体化していくことは難しいと思われる。しかし資本主義の
質的変化をもたらしていることは間違いないであろう。知的人本主義の始まり
なのかもしれない。
日本の企業経営を眺めると、目に見えない概念を分化・発展させ、実践的な経
営の核となる概念を生産する概念生産力が弱いといえよう。実際、日本型経営で
は、知財など権利化された資産は別にして、無形資産やリスクのような目に見
えない経営対象に関して、その価値創造機能や価値毀損の可能性について十分
な配慮が行われてこなかった。その結果、無形資産の戦略的保有・管理・更新・
革新や価値やリスクの評価の重要性に関して十分な認識を持ってこなかった。
特に、終身雇用・ボトムアップ型経営では、価値発生プロセスとリスクに関し
て全体を見渡し、会計や経営、ファイナンス、マーケティングなどの専門的知
識・無形資産を戦略的・総合的に利用して、価値創造力を高めるという視点が
弱かった。
企業の価値創造力は、人的インタンジブルから生成される無形資産の蓄積に
よるところが大きい。それゆえ、企業においては人的インタンジブルの絶えざる
高度化・イノベーション化・ネットワーク化とそれを支える教育研究投資、イン
センティブシステムが必要となろう。日本でもやっと文部科学省がその重要性
を認め、2004 年4 月から始まった高度専門職大学院の制度は、日本企業の人材
育成戦略手段として重要であり、企業や個人が有効に活用することで、日本全体
としての人的インタンジブル資源の高度化による国際的競争力を高める社会的
教育基盤として考えられる。経営者がその昇進過程で構築するパッチワーク的
に蓄積する知識と経験に主として依拠してきた日本型経営では、企業経営の無
形資産について総合的に教育するビジネススクールの利用価値への認識が十分
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でない。
米国では、よく知られているように、特定な企業のニーズに対応したテーラ
ーメイド・カリキュラムも含めて、企業の無形資産構築のための人材育成を求
めて、ビジネススクールを有効活用している。ポスト工業時代では内部組織知
識を基礎にしたオン・ザ・ジョブ・トレーニングの仕方では競争力をもてない
時代である。知識とリスクの時代では、有形資産を中心とした管理の知識はあ
まり重要でなく、無形資産の文脈で経営が必要な時代である。その知識はたえ
ず陳腐化リスクにさらされているのである。
経営者だけでなく個人においても、リスク対応能力を上げるために、リアル
オプションなど戦略的な思考法を少なくとも暗黙知形成に学習しておくことが
必要なっている。たとえば刈屋(2003b)が参考になろう。
2 企業価値創造における無形資産の重要性
2.1 無形資産の理解の仕方
本稿では、無形資産の定義として、企業の価値創造活動に関係する有形資産・
金融資産以外のすべてのものをいい、知的財産権はもちろん、従業員や経営者
能力、操業管理プロセス、組織形態、顧客やサプライチェーンとの関係、企業文化
など、企業価値創造能力の向上に関係するすべてのものをいう。また、多くの場
合無形資産と知的資産を同義語として扱うが、本稿ではこれらを区別して、資
源性・価値創造性を認識でき直接的に(狭義の)知識に関係した企業価値向上
に役に立つものを知的資産(資本)といい、無形資産の一部として理解する。た
とえば、企業文化はそれを概念化し、ビジョンとともに戦略化しない限り、すな
わち形式知として高めない限り、知的資産としてみなされないが、その存在を認
識して利用する限り無形資産である。
他方、価値創造のために組織化・プロセス化するリスクマネジメント、顧客・
供給者との関係なども無形資産となる。さらに、リスクに戦略的に関与して利
益キャッシュフローを作り出す企業経営者の能力をプロセス化した、経営プロ
セスも無形資産に含まれている。経営人的資源は一般的には人的資本の一部を
構成するものとみなすが、経営プロセスと不可分な関係にあるとして、操業プ
ロセスに関わる人的資源と区別して特別なプロセス資産として理解する。生産
セル方式などの操業プロセスは資源として比較的資産性が認識されやすいが、
経営プロセス資産は無形資産の中でも理解の仕方が難しい。
本稿では、経営プロセスでは属人的な能力が要求されるので経営プロセス人
的資源として理解していく。それは、トップの経営プロセスは、ビジネスモデ
ルを含めて企業の枠組と将来の大きなリスクに戦略的に関与するプロセスなの
- 8 -
で、その有効性自体がその価値創造力と不確実性との関係に関わるからである。
企業は経営者が変わるとそのパフォーマンスが変わる。その意味は、少数のト
ップ経営者のもとに形成される経営プロセスが重要であり、その経営プロセス
は経営者に帰属するものの考え方やメンタリティ・文化と直接に関係する。こ
の無形資産は組織が「所有」できない固有な無形資産である。その意味で、最
高経営者に直接的に帰属する経営プロセスは経営プロセス人的資源として扱う、
のである。執行役レベル以上の経営力の開示法が求められる時代である。そし
てそれがガバナンスとしては大きな役割を果たすものと考えられる。この視点
に立った資産認識・分類は後に議論する。
のれんと無形資産
企業の成功にとって無形資産の重要性は今後一層増加するであろう。中でも
組織から分離不可能な無形資産としての企業の「のれん」を含めた、企業の価
値創造に大きく寄与する無形資産の機能の理解が必要であり、それは買収など
の有力な理由となりうる。価値測定評価が難しいのもこの領域である。例えば、
市場イメージ、従業員満足度、顧客密着度、イノベーション能力、経営の質、
人的資源のスキル、戦略ビジョンなどがのれんと関係する。組織から分離不能
な無形資産を理解することが経営を理解することでもあり、のれんを分類して
理解していくことにもなろう。
4節で議論するが、無形資産を識別・整理・分類する概念は、その利用法に
関係する。たとえば、会計的な立場では、無形資産を分離可能資産、分離不能
資産、人的資産と区別している。この資産の分離可能性の概念は、貸借対照表
に掲載しうる認識可能資産概念として国際会計基準(IAS)に採用されている。
これに対して、価値創造能力を前面に出したものとしては、
固有資本(人的資本、知的資産(知財))
差別化可能資産(生産設備、流通能力、販売力)
汎用資本(不動産、一般機械、金融資産)
など、数多くの分類がある(Sullivan(2000)、4節)。この視点は、企業の自ら
将来キャッシュフロー(価値)発生能力を与えるのは固有資産、差別化資産であっ
て、財務報告が中心とする資産項目ではない点を述べるものである。すなわち
貸借対照表の情報は主として汎用資本についての情報であり、将来のキャッシ
ュフローを提供する部分が小さいという点である。工業時代のように有形資産
を所有することで利益が出るのであれば、資本過剰な時代では簡単にその資金
調達が可能である。
なお資産分類は、無形資産の特徴に関わってそれを理解する概念的枠組を与
えるという点で重要である。それぞれの論理的な枠組の中で分類の切り口は選
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択されるものであろう
2.2 無形資産と価値創造の関係
情報化・グローバル化・自由化の流れの中で高度な資本蓄積をした先進諸国
では工業時代が終焉し、「個」の時代といわれる中での消費者は多様な価値を求
めて嗜好を進化させ、物を販売するにしてもその商品構造がデザインやブラン
ド価値も含めたインタンジブル(無形物)の複合体(組合せ)が顧客価値になって
いる点が重要であろう。
そのような中では、企業経営において価値創造競争力を無形資産の文脈の中
で構築していかざるを得ない。そして無形資産の価値創造への貢献を測定評価
につなげて、資源配分やリスク経営につなげていくのが望ましい。特にステー
クホルダーとの関係資産は、企業の価値創造戦略を設計するうえで重要である。
価値は商品構造の中に内包された技術やデザインだけでなく、顧客やサプライ
チェーン、投資家あるいは従業員とのコミュニケーションを通して作り出され
る。それゆえ関係資産の構築には、絶えず信頼関係を更新・強化・拡大してい
くために、企業の社会的責任(CSR)、環境問題への対策、従業員への教育など
の活動を行うだけでなく、それを適切な手段で効果的に情報発信・受信してい
くコミュニケーションが必要である。コミュニケーションはタイムリーな広告
やネットなど多様な手段がある。
その内容は社会全体への明確な企業ビジョンや財務的な情報だけでなく、そ
の社会的活動、自らの価値創造能力としての固有資産の情報など多岐にわたる。
特に信頼関係を大事にする顧客との関係の強化や、将来の価値創造を担う優秀
な人的資源の確保に対しては、社会性を伴ったコーポレートブランドの形成が
重要である。それは長期的な視点からの価値創造投資である。
無形資産への投資の貢献は、耐えざるイノベーションを通してコストやリス
クを削減したり、無形資産複合体としての商品性の内容を高め、ブランドイメ
ージの構築や商品差別化による競争優位性を確保したりして、将来の利益キャ
シュフローにつなげていくことである。そのためには絶えず企業イメージ(コー
ポレートブランド)を高める広告や従業員教育も含めた無形資産構築のための投
資が必要である。知識とリスクの時代では優秀な人材の確保が競争力確保の基
礎であり、そのため一般社会とのコミュニケーションをしてコーポレートブラ
ンを構築していくことが重要である。それは内部の士気にも関係している。村
田製作所はこの視点から広告など関係資産構築投資をしているとのことである。
いずれにしても、無形資産の有効利用とその刷新・イノベーションが、価値
創造への貢献にある以上、価値創造の立場からそれを見ていくのが本稿の立場
である。この立場は、価値創造における企業経営プロセス(モデル)に直接的に関
- 10 -
わり、そこから価値創造にレレバントな無形資産とそれを測定する指標を分析
する立場となる。しかし本稿では無形資産の識別と測定法を、米国の流れに沿
って、価値創造への貢献をリスク分析という視点から考察する。そのための企
業経営モデルとして、COSO のERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)
モデルを利用する。
EU 文書では、知的資産が価値を生むものとしてその多様な展望をしている。
そこでも無形資産の識別・測定問題を議論する場合、結局のところバランスト・
スコアカードなどを利用した経営プロセスに関わるモデルを導入せざるを得な
いことを示している。価値創造プロセスの視点に関わって議論している。そし
てEU 文書の著者の一人であるLev などが提案するモデルの有効性を示してい
る。
2.3 無形資産への投資
無形資産の価値評価においては、その価値創造への関係の理解なしに議論を
することが困難である。多くの場合、価値創造活動にとっての無形資産の位置付
けを明確にせずに議論している。本稿では、資産認識は、価値創造への貢献にお
いて議論するので、会計的な歴史的コストの立場にたっていない。そもそも過
去10 数年、後に述べる脱工業化のもとの企業価値創造構の変化として、価値ドラ
イバーは徐々に有形資産から無形資産へと変化してきたのであり、有形資産を
価値発生源とみる会計測定構造はその価値測定機能を失い始めている。
実際、脱工業時代の無形資産の役割は、過去にあったような価値創造の核(有形
資産)を補足するものではなく,価値創造の核そのものである。この核は有形・
無形資産をニーズにあった組み合わせた商品性に関わる無形知的能力に関係し
て、有形製品を作る場合でもこの組合せ能力が企業競争力の重要な要素である.
国家においても,この最適な方法での組合せ能力に国の富が依存していること
に注意した政策が必要であろう。
このような中で無形資産の企業価値への投資は、将来の不確実性対応能力と
しての経営力を強化し、耐えざるイノベーションを通してコストとリスクを削
減したり、商品差別化による競争優位性を確保したりして、利益キャシュフロー
につなげていくことであろう。
EU 報告書では次の理由によって無形資産への投資が必要であるという。
(1)知識のストック量と深さの成長が企業競争において必要な時代であり、
競争に必要な知識・能力の最低水準が高度化していて、一定量の知識な
しにはサバイバルが困難なこと
(2)不確実性のエクスポージャーの削減と戦略性の能力の増大を図る上で知
識への投資が必要、結果として消費者の選好の変化や新製品の市場規模
- 11 -
の予想、機会の発見、イノベーションの選択と戦略の設計能力の増大な
どによるリスクを削減できること(この投資の効率性の評価は難しい)
(3)ファースト・ムーバーの優位性:模倣されにくい無形資産(スキルワー
クチーム、文化、マーケットネット)、顧客関係・ブランドロイヤリテ
ィの確立(ブランドスイッチコストがかかること)習慣形成、など、最
初に動くことによって得やすい優位性がえられること
このような戦略的重要性を持つ無形資産の特徴として次のものが一般に知られ
ている。
* 物理的資源が有限であるのに対して、無形資産は同じものを何回でもまた同
時に他のものが使用可能であるという意味で無限性をもつ。
* 規模拡大可能性とネットワーク効果:収益逓増の可能性を持ち、限界利用の
機会コストは小さく、他の無形資産に対してレバレッジ効果が大きい。
* 新製品・サービスを革新でき、そこからの権利を確保でき、戦略的提携を可
能にする。
* 事業活動の改善プロセスで付随的に蓄積される。
* 使用しても減耗しないが、陳腐化しうる。
* 技術やデザインなどコピー可能なものと、文化や組織形態などと密接に関係
した分離不能な無形資産は、模倣しにくい。
最初の2 つの性質は、無形資産の規模拡大可能性(スケーラビリティ、ノン
ライバル性)、同時利用可能性とネットワーク効果などとして理解されている。
他方、デザインなどはコピー可能であるために、知財など権利化可能な資産を
除いてコントロールしにくく、外部流出(スピルオーバー)してしまう。また観
察不能であることも多いので、契約では不完全契約などの問題に直面する。マ
クロ全体として見ると、ひとつの企業での有効な無形資産の開発は社会にスピ
ルオーバー可能性をもたらし、経済的な水準を高める、としばしば議論されて
いる。しかしこの議論は、競争差別化能力の平準化につながり、企業倒産など
による負の厚生ももたらしうることを想定していない。ダイエーが衣料売り場
の陳列法としてユニクロのまねをして抗議を受けたことは記憶に新しい。売り
場の作り方も無形資産なのである。情報開示政策ではこの点への配慮が必要で
あろう。
2.4 企業の価値発生源と無形資産
すでに述べたように、無形資産の重要性を認識してきた過程は、「企業価値の
主要な発生源は、貸借対照表の財務的な固定資産からのものより、企業が独自
に保有する「固有資産」としての無形資産からのものが大きい」、という理解が
- 12 -
共有されてきた過程であった。
資本市場での時価総額は(効率的市場仮説のもとで)企業の将来のキャシュフ
ローの現在価値と見ることが可能であるから、無形資産の市場価値は、しばし
ば株式時価総額からバランスシートの簿価を差し引いた剰余価値としても認識
されている。この剰余価値が極めて大きいのである(通商白書2004)。この無
形資産価値の認識は、企業の資本市場での価値評価を前提にした、無形資産全体
の評価である。最近では、米国では剰余価値が簿価の5 倍以上の企業も多いとい
う。無形資産集約的な企業ともいえよう。この残余価値に基づく議論は、市場
の効率性仮説を前提にした、投資家の評価の絶対性に沿った議論を内包してい
る。しかしその前提がなくても近似的にその議論は成立するであろう。
いずれにしても工業時代に典型的であった、「大きな機械や不動産を保有し、
大きな潜在的な需要を背景に、多額の資金調達を基礎としたバランスシート拡
大型企業経営」の時代は終焉しようとしている。そのため、企業経営の指標と
して機能してきた会計情報の体系も、価値創造力を見る上では経営指標性の低
下を免れず、EU 文書でも「会計情報に基づく経営は、バックミラーを見ながら
前に進むようなものだ」という表現がある。これは、無形資産情報と将来の不
確実性・リスク情報に関わる会計情報の限界を意味している。なおEU 文書で
は、工業時代の後の時代は IT、バイオの時代とみている。まさに知識経済の時
代である。
このような視点からの企業の価値創造力の理解は、情報開示やガバナンスの
あり方だけでなく、これまでより企業の社会的価値創造機能に焦点が移行して
いく流れを作るであろう。とりわけ企業そのものの所有に関わる概念のあり方
と知識労働者の地位を変えていくものである(第II 部)。
EU 文書では、このような有形資産から無形資産への価値生成プロセスの変化
に関して次の3 つのインプリケーションを指摘している。
①これまでの貸借対照表の資産の所有権を基礎とした企業概念が変化していく。
企業価値を見る視点として静学的な企業概念から,環境変化に適用する為の,
学習,知の創造,組織活動によるダイナミックな視点が重要である。そこでは
物理資本の管理は重要でなく、学習や知識創造を統制することが重要となる。
人的資産に内包する知識が所有できないことから、所有概念から関係概念への
シフトをあげ、例としてネットワーク上に関係を築くことの重要性を上げる。
②無形資産集約的な価値創造プロセスの流れは,消費者にとっても重要である。
製品は多くの知識を含む複合体であり、これは製品と消費者間の情報非対称性
を生み出し,結局消費者はその製品を購入し試してみない限り品質を確かめる
ことはできない.信頼性と評判(集合的な無形資産)が消費者と製品の関係に
不可欠なものとなる。
- 13 -
③関係と競争政策に関する意味。無形資産はたくさんの補完活動(R&D,教育,
動機付け,組織,関係)の組合せで創造される。イノベーション,企業家精神
および成長を生産する最適の組合せが何かを事前に予測することは困難である。
適切なアプローチは,経済行為者と企業の結合を作る条件整備である.正しい
結合(無形資産)が成長するための条件は,適切な動機づけの存在かもしれな
い。
上の①の部分については第2部で再論するが、価値創造機能の役割が有形資
産から無形資産へとシフトしていくことは、生産手段の所有関係を基礎とした
マルクス的な資本主義観を大きく変えていくことには間違いない。そこでは個
人の所有する知的固有資産が基本になっていくであろう。知的人本主義への流
れかもしれない。高度な資本蓄積を持ち、競争による耐えざる技術進歩が進み
自由かつグローバル市場のもとでの豊かな社会の進化の方向として、きわめて
注目に値する進化の潮流であろう。
3 無形資産とリスクと価値創造
3.1 21 世紀は知識とリスクの経済の時代
グローバル化、自由化、技術革新の加速的な進展を背景に、21 世紀の企業
経営は、知識経済社会への移行と不確実性・リスクの拡大、競争の激化という
相互作用的な変化の環境におかれている。企業がさらされるリスクも巨大化・
複雑化・複合化している。企業の平均寿命は30年ともいわれ始めている。こ
のような環境の中で、企業はサバイバルをかけて、互いに補完的な価値創造関
係を求めた協働や提携、ネットワーキングあるいは合併も盛んになっている。
このような企業経営環境の進化とそれに対応して自らを進化させていくプロ
セスは、IT 技術に支えられた高度に蓄積された資本がさらなる収益レバレッジ
を求めて広義の知識を需要していくプロセスであり、その結果でもある。そこ
では、「広義の知識資産こそが自らの価値創造能力の基本的なレバレッジであ
る」という認識がさらに共有され、知識・無形資産とリスクの概念を基礎とし
た経営パラダイムのシフトが進行していくであろう、と考える。それは、企業
概念、企業の所有概念といった、工業時代に形成された株主を中心とした資本
主義の概念に直接的に挑戦を挑み、それを大きく変えていくものであろう。情
報開示政策問題も、この点を踏まえないとパッチワーク的にちぐはぐな政策を
繰り返すことにもなりかねない。
このパラダイムシフトの背景には、実は「ものからの収益性」よりも「技術・
知識・プロセス・デザインなどの無形資産からの収益性」のほうがはるかに大
きいという理解が、社会的に浸透しつつある点も見逃せない。そこにはグロー
- 14 -
バル競争の中での「ものからの収益性の逓減」と、技術革新進み、高度資本蓄
積を達成した、先進国成熟社会での「豊かさの中での人間の価値概念が進化し
たことによる、商品を評価する価値概念にパラダイムシフトがあった」と考え
られる。
一方、ものが価値を持つのは、当該のものに求められた一定の機能を持つ限
り、そこに内包された知識・技術・デザインなど無形物複合体の価値である。「品
質」はそのひとつである。その意味ではこれまでの工業時代における「ものの
世界」でも実は無形資産の集合・複合体が「「同じもの」のものの違い」を作っ
てきた。日本が強い領域である。「同じ機能を持つものの違い」を作る能力は技
術力に依存する部分が大きいが、同じ機能を作る代替的技術の開発・普及、グ
ローバルコスト競争をとおした低価格化などにより、最近では消費者はみずか
らのライフサイクルのあり方に関係してその「違い」に対して明確な選択を示し
始めている。
実際、選択の多様化、生活水準の向上、資本の蓄積は、「豊かな人生」への明
確な選好を促し、「感性に訴えるもの、個性に対応するもの、時間的な節約を可
能にするもの」など、「違い」への価値の発見を通した無形物複合体への需要の
増大している。消費者はその違いに十分な価格を支払う用意がある。これが、
十分な資本蓄積をした、物の製造ではコスト優位性を見出せない先進国成熟社
会が直面している、「ポスト工業時代への社会経済の進化」であろう。「知識経
済への移行」という概念で代表される進化である。この進化に対応できなかっ
た企業は、淘汰の憂き目を見ている。進化への対応能力こそ、企業経営に必要な
能力であり、リスクからいうと戦略的リスクである。その能力は実はトップ経営
者に帰属した最も重要な戦略的知的資産である。
無形物複合体商品の世界では、必ずしも一物一価の法則が成立しないことも
重要な点である。経済学での一物一価の法則を議論するとき、多数の需要者と
供給者を前提とした議論であり、無形資産に関わる部分ではこのことが必ずし
も成立しない。無形資産の価値評価問題の難しさがここにもある。特殊なブラ
ンド商品、不動産の価値などその典型である。とくにポートフォリオ効果とし
て自分の保有するものへ追加として、相乗効果的な大きな価値を創り出す場合
がある。たとえば、ある特殊な部品特許は、単一の供給であるばかりか、それ
を購入する側も他の特許との結合において価値(ポートフォリオ価値)を持つ
場合が多く、その結合できる特許を持つ企業は、その価値を高く見ることがで
きる。そこには、その結合の方法とそこから作られる商品について情報が相手
にあるかどうかに関係してゲーム論的な価値決定構造をもつ。企業提携やクロ
スライセンスなどは、直接的な価値評価を避けて互いの無形資産の結合により
大きな価値を一緒に狙うものであろう。
- 15 -
3.2 COSO のERM
価値創造の価値はそれを利用することから将来得られる便益・キャッシュフ
ローの現在価値であるが、それは不確実性にさらされる確率変数である。リス
クマネジメントとはこの確率的に変動する価値に対しての経営である。
企業の成長には、その将来の不確実性に対する経営能力が重要である。この
経営能力を理解する枠組をリスクの側面から組織全体としてみるのがCOSO の
ERM の枠組である。各企業のERM の枠組のあり方が重要な無形資産であるが、
それ自体進化すべきものである。
ここでCOSO のERM の定義をのべておく。ERM とは
􀂄 事業体の取締役会・経営者・従業員全員が実行し、
􀂄 全事業を対象とした戦略の設定に適用し、
􀂄 事業体に影響する潜在的なイベントを識別・設計し、
􀂄 リスク選好可能にするマネジメントプロセスであり、
􀂄 事業体の目的の達成に関して合理的な保証を提供するもの
である。まさに経営の基本的な枠組を与えている。マネジメントプロセスは、
ビジネスモデルに対応する経営プロセスであり、価値創造のための無形資産と
して外枠を作るものである。実際、GM のシックスシグマにあるように、そのイ
ンプリメンテーションが価値創造能力の違いを作る。
COSO では、このERM の定義に基づいて、有効な経営の枠組み(経営モデル)
をERM の基づいて明確に述べている。まずCOSO によるERM の枠組みは次の8つ
の構成要素をもつ経営プロセスをもつものであるとする。
(1) 内部の環境 (2)目的の設定 (3)イベントの特定
(4) リスク評価 (5)リスク対応 (6)統制活動
(7)情報とコミュニケーション (8)監視
そしてERM の「有効」性の判断は、8つの全構成要素が存在し、適切に機能
し、評価からの主観的な判断としている。さらにERM では、「経営者がプロセ
スを設定し、目標と使命・ビジョンとの一体化を行い、事業体のリスク選好と
の調整を図ることを保証するもの」として、ERM が企業経営にとって目的合理性
を確保するものでなければならない。そしてそのような有効なERM は、「持続
可能な価値創造とその価値をステークホルダーに伝播する経営者の能力を改善
もの」であることが強調されている。どのような能力かといえば、
・ リスク選好と戦略の調整能力
・ 成長、リスク・リターンの総合化能力
・ リスク対応法(回避・削減・共有・受容)の決定能力
・ 機会の把握能力
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・ 資本の合理的利用能力
・ リスクを統合化能力
などである。このような内容を持つERM はまさにリスクとリターンの視点から
見た経営プロセスそのものである。これが本研究プロジェクトでCOSO のERM の
枠組を経営プロセスとして採用する理由である。
3.3 企業の社会的存在と国の役割
グローバル競争、自由化、技術革新の加速的な進展を背景に、知識を基礎に
した競争と不確実性・リスクの拡大がスパイラル的に進展している。企業経営
では企業の価値創造力と無形資産とリスクの関係を理解することが必要となっ
ている。中でも日本政府は経済環境の大きな進化の中で、このような進化に有
効に対応して、日本企業の競争優位性による価値創造能力の拡大と、将来世代
の豊かな生存基盤を求める国家の国際競争力の確保を図ることが必要となる。
そのためには、企業の価値創造能力と無形資産とリスクの関係の理解がまず必
要である。
このような議論の背景として、「企業の社会的存在の位置付け」について本研
究プロジェクトの立場をのべておく。
企業こそ社会的価値創造機構であり、資本主義的競争環境の中で
需要のニーズ発見機能、イノベーション機能、資本蓄積機能を担うもので
あり、もって将来世代に価値創造の基盤を継続的に提供していく手段であ
る。
この機能を発揮させ、価値創造力を高めていくためには次の点が重要であろ
う。
􀂄 企業の私的自治を尊重しながらも、社会全体として企業と社会の対話能
力として情報開示を求め、経営規律とガバナンスによって経営の有効性・
効率性を高める
􀂄 企業には競争優位性を狙って,不確実性の中から収益を作るイノベーシ
ョン投資が必要であり、そのリスクファイナンスの枠組み・機能性が重要
であるので、戦略的リスクマネー資金の供給の社会的環境もさらに有効
なものとする。そこでは情報開示、資本市場の効率性と投資家のリスクテ
イク機能が重要となる。
􀂄 このような投資活動を通して、企業は価値創造により、雇用・消費・税金・
家計所得の安定性などを通して、大きな社会的厚生を生むのであるから、
これらステークホルダーにその公正な活動の重要性を理解させる。この
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中にはSCR 活動も含まれる。社会的にはその活動を評価していく枠組み
が重要となろう。
(刈屋(2003))。国家にとっても、企業の価値創造力とそのプロセスの効率性
が、実は国際競争力の要であり、それを促進していく政策が政府の機能として
求められる。まさに日本経済の活性化問題ある。この視点からは、国家にとっ
て次のような重要な問題に対して有効な政策を探ることがきわめて重要となっ
ている。
・ 企業価値の発生源とその価値創造能力の確保ために必要なインフラ
・ 企業の社会的保有形態(米国型・欧州型・日本型からさらに競争優位なものへ)
・ 事業ポートフォリオ再構築・転換に関わる企業買収の位置づけ
・ 価値創造力を発揮する企業ガバナンスの有効な方法
・ リスクテイクをする投資家にとって必要な企業情報
・ 地域と企業の関係を理解し、地域が発展するあり方
・ 国家と企業の関係のあり方
このような問題をいかに理解して国としての経済・企業政策を進めるかが、
国家の価値創造能力の差として将来大きく現れるであろう。この中のいくつか
のテーマは、経済産業省の別のプロジェクトとして進んでいるようである。
上の課題の中でも、企業は社会的な価値創造機構として、イノベーション機
能、ニーズ発見機能、資本蓄積機能などを担う重要な社会的な戦略的経済手段
であるのであるから、自由な資本移動を前提としたグローバル化の中で国家と
してその戦略的保有形態を探るのが政府の役割であると考えられる。実は情報
開示政策はその保有形態の考え方に従属するものであろう。米国型の場合、SOX
法の成立は私的自治を基礎にした企業の社会的保有形態の修正であるが、無形
資産の情報開示のあり方に関しては依然としてアナリスト等の情報仲介者経由
を主としている。
3.4 無形資産集約的企業の脆弱性と社会的リスク
繰り返しになるが、企業の価値とは、企業の活動から発生するステークホル
ダーの将来の価値全体である。そこには従業員・消費者の効用・厚生なども含ま
れる。将来の価値は不確実性にさらされているのでそれ自体確率的に変動する
もの(確率変数)であるし、経営の本質とは不確実性から価値を作り出すこと
ともいえる。リスクは価値の下方への確率的変動の大きさである。「ノーリスク、
ノーリターン」は事業経営にも当てはまり、上で述べたCOSO のエンタープラ
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ズ・リスクマネジメント(ERM)の経営の有効性に関する枠組みの中にものその
考えかたが明示的に組み込まれている。
それゆえ無形資産の価値に関する問題は、不確実性から自由でなく、不確実
性、特に経営のリスクへの対応能力との関係が大きい。
例えば、ブランド価値は顧客との関係から作り出されるものであるが、新技
術に対応できず新製品が不足するとか、競争相手の台頭で陳腐化リスクにさら
されるとか、工場などでの事故への経営者の対応能力のリスクが顕在化するな
どにより、ブランドが毀損されて将来キャッシュフローへの影響でるなど、特
別な商品を除くとブランド資産は、絶えずリスクにさらされている。企業の不
祥事とその対応の仕方により一挙にブランド価値が0 に近くなった事例は多い。
最近では雪印や三菱自動車がその例である。そこでは無形資産の価値を大きく
反映する株価は大きく下落し、固定資産や知財など一部の無形資産を除いて、
保有していた大きな無形資産の価値も0に至ることもある。信頼関係にもとづ
く無形資産はこの種の脆弱性を内包している。もちろん、その脆弱性を理解した
経営が必要であり、そのための適切な学習と情報開示・コミュニケーション等が
必要である。
このような例からわかるように、無形資産に関係する価値は、このように将
来の不確実性に大きく関係して変動する。一般的には、「無形資産の価値の確率
分布は、下方にすその長い負のゆがみを持った分布である。」といえよう。IT バ
ブルなどその価値構造について知識・学習が十分でなく、特殊な状況の下では、
投資家の期待が先行して投資家から価値分布の形状の歪みが正と見える場合も
ある。
エンロンと無形資産集約的企業の脆弱性
欧州では無形資産を含めた情報開示という手段を通して、企業経営の健全化
と社会全体としての価値創造能力を測定していくことを図ろうとしている。市
場経済私的自治を標榜してきた株主資本主義による米国では2002 年7 月に改正
企業法(SOX 法)成立させ、財務情報開示に関する経営者の責任と経営の統制
(コントロール)プロセスの有効性について経営者責任を課すというアプロー
チを取った。それは私的自治への大きな関与である(第3 部)。その関与を可能
にしたのは、エネルギー取引会社エンロンや通信会社ワールドコムの不祥事で
あった。そのこと自体は見事な国家危機管理的なリスクマネジメントであった。
これは、価値創造機構としての企業の社会性を認識したものとして理解可能で
あり、企業経営者に明確に経営の内部統制プロセス(無形資産)の有効性に関して
責任を課すものである。そこでは直接的に経営問題に関与して、企業経営の統制
に対する経営者責任を明確に義務付け、投資家や従業員、供給者、顧客あるいは
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企業年金積立者などのステークホルダーに一定の保証を与えるものにした。情
報開示を超えた私的自治に対する関与である。それは、株主中心的な企業責任
の基本原理を大きく修正して、多くのステークホルダーに対する経営者の社会
的責任を求めるものといえよう。株主自治責任(所有)から有効な経営プロセ
スへのパラダイムシフトが見出される。米国資本主義の進化である。
エンロンについてはEU 文書の中でも出ているので、概略を述べておく。エン
ロンはもともとテキサスのガス会社であったが、金融派生商品などを利用して
ガスの価格変動リスクを自ら負担した固定価格ガス商品(ガスとリスク保険の
合成商品)などを提供して、電力自由化やガス自由化の中で急速に成長していっ
た。発電所を持たない電力会社などノンアセット(有形資産を持たない)ビジネ
スモデルを作り上げていった。まさに無形資産集約会社である。エンロンが日
本の電力自由化の中で日本に進出を試みたことも記憶に新しい。日本市場に参
入するために、日本の企業に対して、日本の電力会社より5%安い固定価格で
販売する電力価格固定契約オプション(期間5 年間)を得るために、そのオプシ
ョンプレミアムを契約時に支払っていた(電力を供給する権利を企業から購入、
固定価格で電力を売る権利(プットオプション)の購入)。
しかし、変動性が大きい市場リスク取引で利益を得るのは限界があり、利益
が出ず赤字になっていたにもかかわらず、絶えず従業員や株主、供給者たちに
増収・増益の数字を示していた。その背後に子会社への負債の飛ばしなど、会
計的な粉飾があった。これをトップ経営者と監査法人が組んで隠蔽していた。
そのためその負債の累積が莫大なものとなり、倒産時には多くの人がその被害
をこうむった。企業年金を自社株に投資していた従業員はじめ外部への不経済
は大きかった。それがトップ経営者と監査法人を監視する企業改革法を成立さ
せる合意となった。
EU 文書のリスクへの視点
EU 文書では、このような無形資産集約的な価値創造の流れに対して、「概念」
に基づく企業の脆弱性に関わる問題として議論している。それは倒産後、物理
的な資産が残らないことをさしている。しかし、エンロンやワールドコムの不
祥事に関する限り、会計上の粉飾が問題であって、負債が莫大である限り、倒
産後の有形資産残存価値はあまり意味を持たない。加えて無形資産の価値創造
力が高まる中では、残存価値もスクラップ価値に近くなってしまう可能性もあ
ろう。さらにいえば、技術革新が急速に進む社会では、有形資産が残ってもそ
の残余価値が残るからといっても、必ずしも有形資産集約的企業のほうが頑健
性を持つとは言い切れないであろう。
無形資産集約的な企業の脆弱性の問題に関して、グリーンスパンの指摘が引
- 20 -
用されている。その要点は
1) 物理的な付加価値とは異なる「概念」は、GDP に占める割合を増加させ、
周期的な変動性を減少させてきた。しかし概念が評価の重要な割合を占める
ような経済はそれ自体脆弱性を持っている。
2)これまでの特許や情報技術に関する条約や政策研究等では無形資産に備わ
る高いリスク、無形資産の脆弱性・リスクなどの下方変動性には注意が必要
である。
3)インターネット,テレコミュニケーション,エネルギー取引でおきた無形
資産集約的企業の崩壊は,基本的質問「無形資産の脆弱性とは何か」がとわ
れる。
4)これらの問題は金融に典型的なリスク・リターン分析の必要性を喚起し,
無形資産のリスクの側面への視点を考慮することを求める.これは重要なレ
ポーティングの論争を引き起こす。財務報告書は無形資産価値を十分反映し
ていないだけでなく,資産のリスク・エクスポージャーについての情報の提
供においても役に立たない.
ここで指摘されているリスクの問題は、実はこれまでも貸借対照表の有形資
産に対しても指摘があった。しかしリスクの測定はモデル的な視点があり、会
計が求める客観性と比較可能性の立場から貸借対照表へのリスク概念の導入が
進まなかった。著者自身、リスク会計の必要性を述べてきた。すなわち同じ貸
借対照表の資産内容であってもリスク構造が大きく異なる場合投資価値は大き
く異なることになる。財務報告に関わる問題点は「会計概念が求める比較可能
性を伴った客観性と情報のレレバンシー」の間のトレードオフ関係にあること
は長く議論されてきたが、無形資産の価値創造能力がさらに大きくなっていく
中では、その情報力の基礎が失われようとしている。
しかし、無形資産の個別性、多様性あるいは分離可能な無形資産の市場取引
不可能性などから見て、リスク評価はもちろん価値評価も難しい問題である。
情報開示問題で、何らかの測定によって開示の対象になってもその下方変動性
やリスクに関わる問題があろう。ある程度測定を継続することも重要である。
しかし、雪印のように一夜にして消費者との信頼関係とそのブランド価値を失
い、企業はその存在基盤が失われることもある。測定の意味もこの点を考慮す
る必要がある。食品業・金融業など健康や生命、金銭的リスクに直接関わる業
種での無形資産が信頼関係としてののれんであることは周知のことである。ま
たサービス部門での無形資産は相対的に脆弱である。その理由のひとつは、資
本投資があまり必要でないため競争関係にさらされてその専有性が弱く、収益
性も低い点が上げられよう。
- 21 -
いずれにしても、EU 文書の中にもCOSO で明確に述べているリスクを考慮
した経営の視点が指摘されている。
4 無形資産と経営プロセス
4.1 知識アプローチとリスクアプローチ
このような不確実性と関係する無形資産を見る視点をもう少し議論しておく。
無形資産を見る視点として、経営者の立場、投資家・消費者の立場、政府の立
場に違いがある。本稿の立場は、経営者の立場(企業内部の立場)に立ち、無
形資産の情報開示政策に企業の価値創造機能との整合性を求める立場から、企
業の価値創造行為を見る2つの視点
(1)資源(資産)アプローチとプロセス・アプローチ
(2)知識(入口)アプローチとリスク(出口)アプローチ
を区別する。EU 文書は、基本的に資源・知識アプローチであるとみることがで
きる。さらにEU 委員会への情報開示政策に関する提案という文書の性質のた
めか、情報開示の問題では投資家と政府のための外部的な立場に関係が強い。
本稿の立場はプロセス・リスクアプローチである。それは価値創造経営の企業
内部的な立場を中心とするものである。
(1)の資源アプローチでは、価値創造に寄与する(と想定される)無形的
なものをすべて知識資源として並列的に見る傾向が強い。そこではプロセスも
ひとつの無形資産として資源となる。さらに資源アプローチでは、有形無形資
産の集合が企業であり、価値創造能力であると見る傾向が強い。たとえばEU
文書の知識資本報告書の例となっているCelemi 社のようなコンサルティング
会社などでは人的資産を中心とした自己の能力を表現するものとして、この視
点で十分なのかもしれない。しかし事業会社の場合、当然のことながら価値創
造への貢献ということが資産認識において重要となる。
結果としては、EU 文書でも企業における経営価値創造プロセスに沿って、入
り口から出口に向かっていく。すなわち価値の流れを考慮せざるを得ない。そ
のために、Kaplan-Morton(1992,96,02)の提案したバランスト・スコアカードな
どに沿った経営プロセスを抑える視点が導入される。その出口が不確実性にさ
らされる将来成長に関わる部分である。しかし、この考え方では、経営主体に
よる重要な経営プロセスの価値創造能力が知的資産として認識しにくい構造に
ある、と考えられる。特に不確実性を前にした戦略的な進化対応能力などの要
因が考慮されにくい。実は、この要因が企業の盛衰を決めていく部分が大きいの
で、操業レベルへのアプローチは別として価値の成長を狙う戦略的経営では、
このアプローチは資産認識法として限界を持っていよう。進化が急速に進む時
代では、戦略的リスクの識別とそれへの対応能力としての経営人的資産こそ安
- 22 -
定的に価値を創造できる基礎となるのである。
他方、プロセス・アプローチでは経営プロセスそのものに大きな焦点を置き、
資源とこの「経営主体」(執行役(エグゼキュティブ)と取締役(ディレクター))の
経営プロセスを区別して、そのサブプロセスの集合と資源の関係を経営の重要
な部分と見る。そして資源と認識したものへの関係に対する作用として(サブ)
プロセスを認識し、そのプロセスの有効性に着目する。もちろん、後者におい
ても資源とプロセスの概念は相対的なものが含まれる。この点は後に議論され
る。
(2)についてその違いを述べよう。知識アプローチでは、企業価値創造の
源泉は知識であり、そのインプットの質と量が結局のところ企業の価値創造能
力に関係するとみる。無形資産の中でも知識は特別であるとみる。それは無形
資産の構築には人間の知識によってなされる一方、知識は個人に帰属し、組織
はそれを所有できない。イノベーションは知識の生産を意味する。もちろん形
式知化した知識は組織資産として組織が所有可能である。知財などが代表的で
ある。しかしそれは絶えず陳腐化リスクにさらされている。それを更新してい
くのは人間しかない。すなわち学ぶ能力,知識を創造し利用する能力は個人の
人的資本(能力)に依存している.それゆえ人的資産が極めて特別である。そ
の意味で後に見るEdvinsson-Malone の分類では人的資産を無形資産の中心に
おく。
この人的資産の重要性を認識することは同じであるが、人的資産や他の無形
資産を関係付けてプロセス化するのはトップ経営者である。そこでは将来への
戦略的視点が必要である。本稿でいうプロセス・アプローチはこの点を重視す
る。その詳細は後に述べるが、すでに述べたようにダイナミックな進化の過程
や環境変化に適用する変化の経営が必要である。将来の不確実性を見据える能
力を持ち、戦略的に不確実性に関与して利益キャッシュフローを作り出す経営
能力が経営者に求められる時代である。その意味では高度専門性を伴ったトッ
プ経営者の人的能力を評価していくことが大きなガバナンスとなる。それは組
織内での学習や知の創造,従業員や他の企業などを結合する組織ネット活動は
もちろん、人材の有効活用や将来の不確実性を知によって理解する組織の形成
能力が重要である。その能力のもとに具体的な革新的なプロセスの形成が必要
である。
日本でもこのような能力を持ち革新的な経営者もいるが、経験主義的学習プ
ロセスをえた従業員的管理志向の経営者も多い。管理はできるが経営は不得意
な経営者である。知識とリスクの時代では、このような経営者を持つ企業はグ
ローバル競争に生き残っていけない。ひとつの表現として「日本の経営者はアマ
チュアが多いが、米国の経営者はプロである」と言うことができる。その意味は、
- 23 -
米国の経営者は、経営のプロとして異なる業種も含めて他の企業に移って企業
を成長させる、ことである。そこには、経営に関する総合的かつある程度普遍
的な専門的能力と、将来の不確実性のリスクを減少する知的能力があるように
思われる。ついでながら、経営能力の中に形式知と暗黙知の両方が関わるが、
経営思考法や技術も学習可能な形式知として蓄積・進化している。たとえば不
確実性に対応する思考法や技術の枠組として、リアルオプションという領域も
発展している。またERM もリスクを中心にした戦略的経営方式である。経営者
はそれを使うかどうかは別として、学習することが重要であろう。
本研究プロジェクトのリスクアプローチは、価値創造プロセスと無形資産と
の関係を理解する枠組を与える。確かに知識アプローチは、おのおの資産認識
において知識と価値の関係を想定するが、実際の価値創造プロセスへの貢献を
十分把握しているものとはいいがたい。教育訓練費やプロセス開発投資、ある
いはシステム投資などコストを伴う場合でも、それは入り口サイドでの価値の
判断であって、そのコストがまったく無駄になってしまうことも多い。リスク
アプローチではリスクを
1) 戦略的不確実性(リスクと機会):競争、技術、嗜好、規制、市場
2) 操業的リスク:生産プロセスや物流システム、マーケティング方式
3) 財務的リスク:資金調達、金融資産・負債、有形資産や知的財産など時
価評価などに関わる変動
4) 保険的リスク:火災・地震・水害、プロダクトライアビリティなど
に分類し、企業の事業形態に関係してそれぞれの無形資産のリスクを認識して、
その裏の価値を認識する。たとえば、有力な商品や操業プロセスなどで他に対
して競争優位性を持つものの将来のリスクを認識し、その無形資産の価値を維
持するリスク対応法を見つけることが、操業的なレベルでの資産認識に対応す
る。また、液晶テレビなどで競争環境が将来厳しくなっていくことが戦略的な
思考法のもとに経営によって認識される場合、それへの対応としてコンセプト
の転換や新しい商品開発を開発する能力を評価し、人的資源の再配分や再教育、
あるいは採用、ヘッドハンティングなどで、人的資産能力の認識をする。市場
の価格低下によってコスト採算性がないのであれば、R&Dによって新商品を
開発をプロアクティブに計画することになるが、その戦略的判断は経営者能力
に依存する。この経営力とR&D能力が上に述べた戦略的無形資産になる。詳
細は第3 部で議論する。
4.2 無形資産の分類と特徴
重要な分類の例
90 年代には欧米諸国で、会計的な立場のみならず、無形資産の企業価値創造
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における経営上の役割の概念的枠組・モデルが提案されてきた。無形資産につ
いての理解の仕方、資産分類などについては、すでに多くの文献があるが、無形
資産の多様性により、多くの視点が論理的に設定可能であるために、必ずしも統
一的な理解の仕方を求める流れとはなっていないし、求めることも必要ないで
あろう。それは、分類自体その分類目的や無形資産の特徴などからきわめて多様
性をもつものであり、業種や(消費活動や生活の)文化によってもその分類の概念
区分が違ってくる。それは「資産認識」のあり方にも関係する。それぞれの論
理の展開において自然な分類が選択されてしかるべきである。
(1)会計的視点からの分類
伝統的会計システムの枠組の中では、客観性と貸借対照表の掲載可能性から
無形資産の資産認識のための4つの基準
1)特定可能 2)将来の収益性
3)個別に転記可能 4)コントロール可能性
(IAS38,1998 参照)を設定している。この立場からの分類は、分離可能資産、
分離不能資産、人的資産である。そして、貸借対照表の資産認識を
分離可能性・契約その他法的権利(知財のように個別的に分離して資産認識
できること)
加法性(他の資産の価値から独立してその価値が評価され、加算可能である
こと)
費用性(過去において費用認識ができ帰属できること)
の性質を満たすことを前提とする。実際、国際会計基準(第38 号)改定案では、
「無形資産とは、物質的な実体のない非貨幣性資産である。」
とし、その識別可能性に関して
(a) 分離可能であること、すなわち独立にまたは関連する契約、資産
または負債といったいとして、企業から分離または区分、売却、
上と、ライセンス、賃借または交換できること、
(b) そのような権利が譲渡可能であるかまたは企業あるいは他の権
利・義務から分離可能であるか否かに関わらず、契約上またはそ
の他の法的な権利から生じるものであること
と述べている。しかし無形資産は企業から分離しにくい市場取引不能なものの
集合が大きな価値を作り出すことから、このような会計的な基準の限界が明ら
かである。
(2)European Commission(2003)では21 世紀型の企業の資源の基盤を
1)有形資産(物理的資産、金融資産)
2)無形資産(重要な供給契約、登録可能な知的資産、その他の知的資産)
3)無形能力(コンピテンシー・マップ)
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4)潜在的な能力(リーダーシップ、モチベーション、組織など)
に分類して、資産概念の軸を求めている(2004 年度通商白書)。上から下の資産
に向かうにつれて、ソフト度が増し、企業の固有性が高まるものと見ている。
1)2)は伝統的な会計制度で議論しうる領域であるが、3)4)はそれが困難な領域
である。企業の価値創造能力としては3)4)の資産(能力)が極めて重要であり、
Sullivan の言い方では固有資産である。
(3)Stewart(2001、翻訳2004)では、知識アプローチのもとに、知識こそ
が企業の成長の源泉であり、その視点から資産を「現在の価値をより高いもの
に変換するもの」として幅広く資産認識する。そのもとに知的資本は
人的資本(才能、頭脳)
構造資本(知的所有権、ソフト、文書、システム)
顧客資本(クライアントとの関係)
を識別する。知的資本を活用する企業は物的資本保有コストを軽減し、物的資
産からの収益を最大化する、とみる。Stewart の議論は知識アプローチの中で
再論する。
(4)Edvinsson-Malone(1997)の分類
デンマークの保険会社Skandia にいたEdvinsson が93 年に開発したバリューシ
ェーマは、97 年にMalone と一緒に開発されたSkandia Navigator として情報開
示の基礎となった報告書形式(枠組み)として有名である。日本ではアクセル社
がこの考え方の基に経営コンサルティングを行っている。そこでは、企業の市
場価値は知的資本と財務資本により創造されるとみる。知的資本は、人的資本
と構造的資本からなる。さらに構造資本は顧客資本と組織資本からなり、組織
資本はイノベーション資本とプロセス資本からなる(図2-1)。
図2-1 Edvinsson-Malone(1997)の資産分類
知的資本:人的資本
構造資本:顧客資本
組織資本:イノベーション資本(知的資産と知的財産)
プロセス資本
この枠組は、バランスト・スコアカード方式的に経営の流れを意識したもので
ある。その全体的な目的は、イノベーションを開拓・育成するもので、更新・
開発フォーカス、人的フォーカス、顧客フォーカス、プロセスフォーカス、そ
して財務フォーカスの5 つの焦点をすえる。この方式についてはII 部で述べる。
(5)Sullivan(2000、翻訳2002)の分類
企業の固有性こそ価値創造の優位性と見るのが、Sullivan である。彼の著書
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Value-Driven Intellectual Capital『企業経営の真髄』は、無形資産の価値創造
機能を総合的に理解し、経営での実践への道を示した重要な経営書である。彼
は、知的資本についての考え方として、
・知識と頭脳力に注目するもの(上のStewart の立場)と、
・資源に基盤をおき、無形資産と有形資産とのユニークな結合から価値が生
成されるという考え方(Sullivan の立場)
に分けている。そして概念的なモデルとして、3 つの座標軸
1) 企業ビジョンに関する戦略や知的資本の担う役割を記述するコンテク
スト軸
2) 非会計的な方法で企業を再定義する軸
3) 企業の無形資産を積極的に経営する活動の軸
を採用し、資産を
固有資本(人的資本、知的資産(含知財))
差別化可能資産(補完的ビジネス資産)(生産設備、流通能力、販売力)
汎用資本(不動産、一般機械、金融資産)
に分類している。この視点は、日本的な「企業は人なり」の視点に近く、企業
の戦略的ポジショニングを可能にし、将来キャッシュフロー(価値)発生能力を与
えるのは固有資産、差別化資産であって、「財務報告が中心とする汎用資産」の
資産項目ではないと見ている。固有資産の中の人的資産には、知識およびノウ
ハウ、関係資本、組織資本を含む。関係資本には外的な関係としての顧客資本、
内部関係資産などをあげている。
Sullivan 分類の重要な点は、無形資産概念の価値創造活動への実際的経営へ
の応用法を詳述している点であろう。他方、価値経営に注目するあまり、リス
ク経営のあり方への記述が十分でなく、資産認識がプロセスを明示的に含んで
いないように思われる。
さらに、有形資産の中にもその企業しか利用できない技術やイメージ(無形資
産)を内包した機械や不動産などがあり、それをバランスシート上では取得原価
(減価償却調整)で掲載している。これも物的資産としての価値以上にその企業に
貢献する固有資産であろう。すなわち、有形資産であっても、競争優位性を作る
固有資産部分を内包している限り、それは価値創造競争力となりうる。特に、そ
の企業特有の技術を載せた生産機械などは、鉄という素材の中に化体した技術
知財あるいはコンピュータ制御装置の知的成果物が価値創造力となっているの
であって、「タンジブルの中のインタンジブル」が生きているのである。また鉄
の製造そのものにおいても、「硬くて加工しやすい鉄」などさまざまな技術イン
タンジブルが関わってその多様な品質を作っている。その意味では、タンジブル
とはインタンジブルを載せる素材であり、そのタンジブルに含まれているイン
- 27 -
タンジブルの複合体の評価が重要になる。それは、製品についても言えるもので、
アパレルや車などの価値を決めるインタンジブルとしてはデザインなどが大き
い。この視点に立つと、価値のあるものあるいは価格競争力を持つものは、成熟
社会の中ではインタンジブルを内包した複合体である、ということになろう。面
白い例としては、古く重厚なデザインの賃貸不動産オフィスが,コンピュータの
結合がケーブル通信から無線通信になって再びその重厚なデザインの価値が戻
ってきたという報告もある。技術進歩がデザイン資産の価値を復活するという
例である。技術革新が有形資産の価値を変えていくのである。ダイナミックな
状況では有形資産に含まれた無形資産の価値にもこのような不確実性もある。
無形資産のリスク、その脆弱性についてはすでに議論した。
これに対してSullivan の言う固有資本であっても、その企業の価値創造活動
との関係を理解しない限り、実際的な意味での無形資産の価値評価は困難であ
ろう。無形資産の価値は、企業の生産プロセスや経営プロセス、あるいは顧客関
係やサプライチェーン関係の中で生成される将来の利益キャッシュフローへの
貢献度がその実際的価値であるはずだ。それゆえ、たとえば企業の中の博士の数
それ自体は意味をもたないことにも注意する必要がある。もちろん企業イメー
ジを作る役割などもある。
5 プロセス・アプローチと価値評価
5.1 プロセス・アプローチからの資産分類
企業の無形資産についての情報開示問題は、企業の価値創造プロセスとの関
係で議論する必要があることを述べた。その価値創造プロセスは経営思考法や
経営プロセスに関係しているので、情報開示問題を議論する場合そこへの関与
が必要となる。
この節では本稿が経営プロセスを理解する立場としてのリスク・プロセス・
アプローチからみた無形資産の分類を提案する。後にリスクの概念と結合する。
リスクと経営プロセスの概念の識別により「企業の価値創造プロセスと経営」を
把握しうる概念的枠組みがえられる、と考えている。具体的には3 節で議論する。
多くの資産分類では一般に組織とプロセスは、無形資産の概念として並列的に
直接組み込まれてきた。たとえば、通称白書2004 のデンマークCelemi 社の例
がそれである。
しかし、価値創造能力や価値評価を考察する場合、企業の価値創造構造を、本
節で述べる無形資産の有機的結合からなる知的有機体とみて、その構造の作り
出すプロセスを理解していくことが重要であろう。また、情報開示にしてもこの
視点を据えることが「企業の潜在能力」を、より理解しやすくなるものと考える。
- 28 -
本研究プロジェクトでは、企業の価値創造プロセスとしての基本構造は組織
資産と人的資産からなるものとみる。名称が若干違うがこの点は
Edvinsson-Malone に対応する(図2-1)。
組織資産は、会社組織が所有可能なものとしての(1)BS 計上資産(金融資産、
有形資源(機械、不動産など))と(2)BS 非計上な組織無形資産からなるもの
とみる。人的資産は「所有不能」かつ組織資産の蓄積に関わる資産としてみて
いる。そのため、知識アプローチでは知を生産する本源的なものとみる。しか
し組織資産の蓄積が最終的な狙いではない、とみている。組織資産は絶えず陳
腐化リスクに晒されているので、減価償却が必要であろうが、その評価に対す
る会計的な基礎を確立するのが難しいし、ビジネスモデルも含めて進化が急な
ときにはほとんど無価値となってしまうことも多い。
組織無形資産は、①組織資源、②プロセス資産、③関係資産に分類する。また
所有不能な人的資産は、④操業的人的資源、⑤革新人的資源、⑤経営力プロセ
ス資産に分類する。「資源」という言葉は、その組み合わせによって資産化可能
な生産資源をいう。
図3-1本稿での資産分類
(1)BS 計上資産:有形固定資産(機械、不動産)、金融資産、無形固定資産
(2)組織無形資産 ①組織資源、②プロセス資産、③関係資産
(3)人的資産:④操業人的資源、⑤革新人的資源、⑥経営力プロセス人的資源
組織無形資産の具体例として次のような例もしくは分類がある。
①組織資源:イノベーション資源(知的財産、研究支援資源、ノウハウなど)、ビジ
ネス支援資源(IT システム、データベース)、経営支援資源など
②プロセス資産:操業・生産プロセス、管理プロセス、流通プロセスなど
③関係資産:供給者関係、外部委託関係、内部関係、顧客関係、社会関
係(のれん)、資本関係、提携・ネットワーク関係
(1)は明らかであるから、(2)と(3)について説明する。
(2)組織無形資産は識別された形式知化されたものである。それは、外部購入し
た無形資源や絶えず人的資本(人材)の知的生産活動により開発・蓄積された組織
資源である。
① 組織資源は、イノベーション資源としての、特許、権利化された知財、商
標、データベース、情報資源、IT システム資源、組織知としてのマニュアル、
契約資源、などである。
② プロセス資産は、操業プロセスなどこれまで組織内部で価値創造プロセ
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スを効率的に進行を図るために、人的資産や組織資産に作用するプロセ
スである。またマーケティングプロセスやサプライチェーンプロセスな
ど関係資産に作用して顧客や供給者と共有したプロセスも含まれる。プ
ロセスは、組織的学習や人的資源の知識生産活動によって蓄積してきた
ものである。
③ 関係資産は、契約によって成立しているもの、信頼関係に基づいているも
の、ブランド・イメージ・認知に基づいているもの、に分けられる。もち
ろんこれらは相互に関係している。本稿では個人の属人的関係に基づく
信頼関係で、組織資産として認識されていないものは人的資産として扱
う。関係資産は内部関係資産と外部関係資産に分類される。
1)外部関係資産は顧客資産、サプライチェーン関係資産、提携・ネット
ワーク関係資産、株主関係資産、社会的関係資産(CSR、ブランド関係)
などに分類される。供給者や提携先との関係は、契約とその実行から発
生する信頼関係に基づいている。他方、投資家、顧客や社会との関係は継
続的な規律ある企業活動や情報開示を通したコミュニケーションにより
確保されるもので、信頼関係とコーポレート・ブランド・イメージに基づ
くものである。無形資産を基礎とした競争環境のもとでは、継続的に優
秀な人材を確保し、イノベーションを重ね、安定的な成長をしていく上
で、このようなコーポレートブランドの構築がいっそう重要になってい
る。
資源的な外部関係資産としては、顧客対応マニュアルや顧客名簿、供
給者と情報共有するシステム資源、供給者と操業効率を上げるために共
同開発したプロセス資源などがある。またコーポレートブランドや概念
化されたのれんなど信頼関係とイメージを基礎に投資家、消費者、従業
員と一緒に将来の価値創造を作っていく関係資産もある。
2)内部関係資産として、内部人的資源に関係をつけた意思決定組織、生
産設備と人的操業資源に関係をつけた生産組織などの組織関係資産をは
じめ、子会社との関係、などである。加えて、ビジネスモデル、会社の規則、
文化、インセンティブを作る報酬体系、文化に絡む暗黙のルールなど関係
の基礎を作るノウハウも関係資産であるが、その関係の基礎に法的な契
約関係を超えた信頼関係を前提としている場合が多い。このような関係
構造が組織資源、人的資産、プロセス資産に設定された全体が企業組織
である。組織とは,企業における知識の流れを構造化して個人間の相互
作用を促し、価値創造の時間的流れを円滑にするものである。
(3)人的資産は、知的資本としての人的資源・人材である。人的資産という
- 30 -
言葉は、「その知的能力を企業組織資産を基盤として、当該企業に価値創造のた
めに発揮する」契約関係にある人材資源を言う。人材とは専門的知識と思考力・
創造力を持ち、組織的資産を基盤に成長を目指した価値創造に貢献する人間で
あるが、組織に革新・刷新を与え、競争力を確保する知的能力である。知的資
本に関係をつけ、機能化することが上に述べた内部関係資産である。そこには
昇進制度などインセンティブシステムや雇用システムなどが関係する。なお経
営人的資源、革新人的資源は主として将来の企業の戦略性に関わる人的資源で
あるのに対して、操業的人的資源と補助的人的資源は内部的な管理運営に関わ
り、継続的な活動と刷新により価値創造に貢献する人的資源である。リスクで
いうと前者が戦略リスクに関わる意思決定に大きく関わるのに対して、後者は
操業リスクに対応能力を持つものである。
これらの区分は、相対的なもので個人としては両方に関わる人材も多いが、
知的機能としての区分として分類している。すなわち個人は、その資産として、
知識、思考能力、創造力などの知的資産と、属人的な信頼関係に基づく関係資
産をポートフォリオとしてもっている。これらの多様な個人的資産を部分的に
取り出し、他の個人のものと組織の中にポートフォリオ的に結合して、組織的
な知的機能に変えるのが経営である。たとえば中間管理職や、アパレル産業や自
動車産業などでの優秀なデザイナーなどは操業機能と経営・イノベーション機
能の両側面を持つのかもしれない。
さらに商品開発においては,調査やマーケティングや商業化フェーズは製造
フェーズより相対的に重要であるといわれ、内部と外部の関係を抑える人材も
必要である。さらに企業の外部と接点をもち直接的なコミュニケーションを行
う広報人材も企業の内部と外部に関して幅広い知識が要求されるのであって、
戦略的な情報開示とコミュニケーション能力が必要である。
④操業的人的資源は、いわゆるミドルとボタムの人材である。既存の生産管
理プロセスや物流プロセス、マーケティングなどを改善したり、無形資産の複
合体としての生産物の品質向上や広告宣伝などを通して達成される生産物の差
別化戦略に貢献する。その製品差別化は,顧客や社会とのコミュニケーション
を通して得られる製品に関する知識の増加,ブランド資源の有効利用、投資家
との関係や社会的責任活動などイメージ,評判の結果として可能になる。その
意味では、安定的な価値創造を担うのは操業的な人的資源の役割が大きい。そ
こで新しく知識化される技術やプロセス、コンピューターソフトなどは、陳腐
化した組織資源を置き換え、組織資産として蓄積される。人的資源の価値創造
活動の結果による組織資源の革新・刷新・蓄積効果が継続的な組織基盤を作り、
人材の流入出に対しても継続的なビジネスを維持できる。「のれん」の基礎でも
ある。
- 31 -
Stewart(2001)やEU文書は、技術に支えられた「知識」の時代では、操業での
ボタムの人の仕事の性質も大きく変化していていることを指摘する。そこでは
チームワークのもとで問題解決により深く関わる能力、関係を作り維持する能
力を開発することなど、優れた分析能力が求められる。
一方、商品はグローバル経済のもとでの技術革新や競争、高度に蓄積された
資本を背景とした豊かな社会での消費者の嗜好の変化、自由化など規制環境の
変化、環境制約など企業外部環境の進化していく。この進化への対応能力こそ
が、経営人的資源と革新人的資源にその舵取りが求められる。いわゆるこれら
の資源は、経営と商品のイノベーションを引き起こし、戦略的不確実性に関与
して、リスクとリターンの関係を識別し、競争優位性を確保しながら、安定的
に企業を成長させる能力を担う人材である。Stewart(2001)が財務投資家と並列
化する「知識投資家」としての人材である(第2 部)。その意味は経営人材と革
新R&D人材ともに高度な知識を持ち、知的能力の高い人材であって、財務資
本に大きな収益レバレッジをもたらす可能性がある人材である。
④のR&D人的資源は、将来価値の本源的な発生源としてみることができる。
これは知識アプローチでもプロセス・アプローチでも同じ見方に立つが、リス
ク・プロセス・アプローチでは、将来の戦略的不確実性(生活様式・価値観・嗜好の
進化、技術革新、規制の変化、競争環境の変化など)との関係からみずからの競
争力のあるイノベーションを選択する。その意味では革新人的人材は経営力プ
ロセス人材と十分なコミュニケーションをする必要がある。MOT(Management
of Technology)などのビジネス思考領域の分化などは、商品性の構造の理解や、
技術、デザインと消費者の嗜好の関係など、今日の無形資産複合体製品の理解
には幅広い視点が重要となっていることを示すものである。もちろんR&D 人的
資源内部や経営プロセス人材とのチームワークとコミュニケーションを図るた
めの内部ネットによる知識の交換、知識情報の開示、ナレッジマネジメントな
どの知識生産支援の組織資産構築も重要である。
R&D 人的資源の知識生産能力・創造的能力を発揮させて「組織的所有」の商
品開発プロセスへと変換するためには、革新的な経営思考が重要になり始めて
いる。これまでの日本の社会ように、会社が占有的に革新的人材を雇用し、終身
雇用制・年功序列制のもとに安定性と長期性を保証して、研究プロジェクトを実
行していくプロセスの有効性と進化のスピードへの効率性が問われている。人
材を企業の外に求め、式の提供や研究資源の提供により、大学やベンチャー企
業とのネットを作り、ウィンウィンの関係から大きな利益を相互にシェアする
流れにある。マイクロソフトのようなソフト会社や、バイオ関係会社などが典型
的である。
そこでは、時間的な勝負を通した市場でのファーストムーバー・ベネフィット
- 32 -
と知的ネットの相乗効果による商品性の高度化が得られている。もはや組織を
基礎として、あるいはバランスシート的な資本所有概念を基礎にして、敵や味
方などといっている時代ではない。みずからの組織的資産、人的資産のネット
ワークにより価値創造を求めていく時代である。企業の境界は薄れていく。また
組織の水平化を促していく。重要な点は、その価値創造プロセスに関する所有権
とその分配のあり方であろう。
⑤経営力プロセス人的資源を考察しよう。経営人的資源はその意思決定能力
として企業組織に対して価値創造のための資源性を持つと同時に、不確実性の
中から価値を実現するために他の資源の関係資産を有効に使い、意思決定をプ
ロセス化する。自ら経営全体のプロセスメイカーとしての主体と同時にそのプ
ロセスに対する客体という意味で特異な存在である。
具体的な経営人材の機能は、変化の経営に関わり、インセンティブシステム
の変更、事業ポートフォリオの更新・再構築、組織の進化への対応・刷新、提
携・ネットワークの構築、巨大イノベーション投資,サプライチェーンの再構
築、ライバル企業とのジョイントベンチャー,など、戦略的リスクへの対応で
ある。最近の経営の流れとしては、コア活動に選択と集中、事業をアウトソー
シング,全階級組織の中で分権化フラットな組織などが観察されている。しか
し、その選択は、組織構造として確認された取締役会の機能などを生かした、
透明性をもった経営プロセスのもとでの意思決定に依存する。
経営力プロセス資産は、進化の過程でビジョンと文化を刷新し、人的資産と
組織資産を有機的に結合し、進化に対応して、リーダーシップと決断力を持っ
て意思決定し、将来の不確実性に戦略的に関与して、価値創造をする経営者の
能力としての経営力をプロセス化したものである。そこには経営者の性格や暗
黙知が組み合わされた属人的要素が大きい人的資産と結合したプロセスである。
これは、あまり資産として認識されていないが、本稿ではこれが実はきわめて
価値創造力に関係する資産としてみている。米国では、ウェルチ氏やガスナー氏、
日本では日産のゴーン社長の下での経営力プロセス、松下電器産業の中村社長、
キャノンの御手洗社長のもとでの経営力プロセスなどがその例である。
経営プロセスのために資源の間に関係が導入されたものを組織といい、関
係を通した情報の流れや、意思決定を含む命令や信頼、動機付け、誘導などが伝
達・コミュニケーションとなり、価値創造プロセスが時間の中で進行する手順で
ある。大きくはERM のような経営手法としてのリスクマネジメントプロセスも
きわめて重要なプロセス資産である。これらの要素が有機的に組合されたもの
を企業組織と理解する。
この構造的理解に基づくと、企業の価値生成プロセスは、経営プロセス(同じこ
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とだがERMプロセス)が人的資産と組織資産に作用するプロセスである、と見
ることができる。この経営プロセスを識別し、この視点から研究プロジェクト
では「価値と知識とリスク」の理解の枠組みを構築する。
要約すれば、トップ経営者は組織資源と関係とプロセスを選択でき、人的資産
にその能力を発揮させて、時間の中でこれら3 つに作用し、価値創造プロセスに
イノベーションを仕組む機能を与えられている。そこでは、資源における競争優
位性、関係における競争優位性、プロセスにおける競争優位性が求められる。
この競争優位性を作るのは経営力プロセス人材である。
5.2 無形資産識別と測定評価の問題
以上の視点から第3 部ではリスクと関係付けて、無形資産の価値創造的寄
与をERMの経営プロセスと対応したCOSO の要素から識別することを試みる。
そして、業種ごとに関係するリスクを戦略的リスク、操業リスク、財務リスク、危
険リスクに分類し、それぞれのリスク要因に関わるインタンジブル、タンジブル
資源を識別する一方、評価に関しては将来のキャシュフローの現在価値を事業
ラインもしくは企業の価値の確率分布として評価することを狙う。 この確率
分布は、実は多様なインタンジブル資源と関係とプロセスの総体としての価値
評価である。
この価値分布の形状は資源、関係、プロセスに依存し、その変更は形状を変え
る。加えて、不確実性・リスクの認識とシナリオのあり方が形状を変える。したが
って、その前提条件は業種、事業に依存する。それゆえこの分析結果もその影響
を受ける。この点に関しては、組織における意思決定が内部客観、組織主観に基
づいて行われることが合理的である限り、それ自体が実は企業の能力となって
いるとみることができ、合理的でもある。特に他を一定にした無形資源の変化に
よるアーニングアットリスクへの影響などを見ることにより、企業の無形資源
の価値を知ることができよう。
知識・資源アプローチによるEU の報告書の測定・評価に関わる問題について
触れておく。第2 部ではこれを議論する。なお無形資産の評価・測定とは、企業
の価値創造プロセスを概念的にモデル化し、そのプロセスに関わる無形資産を
識別し、その資産に関係するパフォーマンス測定値を特定化し、その測定値か
らパフォーマンスを時系列的に評価していくことを意味している。
無形資産の評価モデルを議論する視点として
1)無形資産・知的資本測定に関する方法・アプローチの枠組
2)無形資産測定とパフォーマンス評価に焦点あてるもの。
3)無形資産測定モデルの違いは、利用方法に関係する。
をあげている。利用方法は内部利用か、外部利用か。外部利用の目的の場合で
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は、全てのステークホルダーが、無形資産測定とツールの利用結果に関する知
識を共有することに努力している。
また測定目的のために技術的手段の視点から、Sveiby による無形資産評価モ
デル手法の4つの分類を利用している。
(1) 市場時価総額手法(MCM):無形資産評価を企業の時価総額と純資産の
差として評価。
(2) 資産利回り手法(ROA):ROAや純利益のような財務報告書の違いに
基づくもの。適当な例は、企業のROAと業種平均のROAの差を、企
業の平均的(無形資産・財務的固定資産)の額にかけるというもの。
(3) 直接知的資本手法(DIC):無形資産の構成要素を特定して財務的価値を
評価
(4) スコアカード手法(SC):知的資本の構成要素を特定し、特別な指標と
比率をそれらから推定、スコアカードや図形として記述。
そして具体的な測定法モデルとしてつぎの7つの知的資本測定手法をあげて
いる。
① 市場価値対簿価とトービンの Q(A)
② EVA(A)
③ レブの知識資本計算公式(A)
④ Edvinsson-Malone のSkandia Navigator(C)
⑤ Sveiby の無形資産モニター(C)
⑥ Kaplan-Norton のBSC(C)
⑦ Lev のバリューチェーン・スコアーボード(C)
ここで(A)は、財務的かつ全体的(集計的)価値測定、(C)非財務的かつ個別的
価値測定をするモデルである。これら第2 部で議論する。
6 無形資産情報開示の問題
6.1 企業のコミュニケーションと情報開示政策の基本的視点
ここで政策的な視点として指摘すべきことは、広義の価値は、結局のところ競
争環境の中で市場の顧客・投資家だけでなく従業員、供給者、事業提携者、ある
いは行政当局との「コミュニケーション」をとおして作られる点である。コミ
ュニケーションは企業が提供する商品性の内容を変えていく。そこでは消費者
の嗜好や価値観に関わる無形資産を商品性に埋め込む努力が行われる。その意
味で商品は顧客と一緒に作る時代になり始めている。消費者の価値観も含めた
効用関数に依存した商品構造を作ろうとしているのである。そのために、コミ
ュニケーションをして顧客との関係資産を絶えず更新しようとする。たとえば、
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CSR 活動やブランド維持活動やポイント性などを利用した顧客との「関係資産」
の構築がそれである。IT 技術はこれを支援する。
情報開示政策においてもそのコミュニケーションが活性化されることを支援
することが重要であろう。その意味で、それぞれの企業がみずから情報開示な
どや顧客政策などによって戦略的コミュニケーションを促進するための、社会
的な枠組みやインフラ構築がその支援となろう。その中に外から要求する情報
開示のあり方も関係する。これによって、企業の価値創造の有効性・効率性を高
めると同時に、少数の経営者の不祥事や間違った判断によって倒産が起こると
いう、社会的に大きなリスクとなるものを排除するものでなくてはならない。
その結果、非効率的企業の市場からの退出をスムーズに促進すること、社会的に
大きな影響を与えた経営不祥事に効果的に短期間に対応することなど、社会的
なリスクマネジメント文化を創ることも重要であろう。そのためには、企業の政
策は労働市場に対する政策と並行的に進める必要がある。
なお無形資産の識別、評価とその情報開示に関するアプローチとして
(1)マクロ的(集合的) vs ミクロ的(個別的)
(2)政策当局 vs 企業
(3)投資家 vs 経営者
(4)入り口(知識) vs 出口(リスク)
(5)財務(会計) vs 非財務
(6)外部統制(ガバナンス) vs 内部統制
などの対立的概念軸の作り方がある。これらの2 次元的対立軸でそれぞれの議
論の展開が可能である。しかし、本稿ではそれを展開するのではなく、企業の
立場からの価値創造力を基本とした視点から、リスク・プロセスに関わる議論
を展開する。
6.2 経済白書2004 と知識人本主義
価値発生源が有形資産から無形資産への流れの問題と、企業の社会的責任問
題をこの流れと関係させて情報開示問題としてみる立場から、マクロ的な視点
から包括的に整理しているのが、経済産業省『通商白書2004』である。企業の
競争力は国家の競争力でもある。無形資産の価値創造力への寄与が大きいので
あるから、無形資産・知的資本に関する有効な産業政策がますます重要となっ
ている。さらにさまざまな無形資産にイノベーションを引き起こす社会全体と
しての人的資産能力の水準を高めていく政策が重要である。そこでは耐えざる
戦略的な人的能力の向上のために社会的政策投資が求められよう。
すでに述べたように、企業は社会的な価値創造機構であり、イノベーション
機能、ニーズ発見機能、資本蓄積機能などを担う重要な社会的な経済手段であ
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り、国家としてグローバル化の中でその戦略的保有形態を探るのが政府の役割
である。政府の役割を議論する場合、政策の目的に関してなんらかの最適性の
概念が必要となろう。その最適性は、ステークホルダーの価値に関わるもので
ある。そこでは、「企業とは何か」という基本問題も関係する。
一般的に言えば企業の私的自治を維持しながら、適切な企業ガバナンス仕組
みや、リスクテイクをする投資家、商品性に関してコミュニケーションをとる
消費者などへの情報開示政策をとおして、結果として無形資産を有効活用でき
る「経営力のある企業」は成長し、その能力が小さく企業価値創造力の小さい
企業が淘汰されていくことを可能にする企業システムの設計が求められるので
ある。ステークホルダー全体から社会的狙い(目的関数)から見た、企業の社会的
保有形態の最適性に関する問題である。白書が強調する企業の社会的責任活動
もその目的関数の形状に関わるものであるが、それぞれの企業のステークホル
ダーとの戦略的コミュニケーションを重要視するのが良いと考える。個人は「良
い企業」の選別能力を十分保有している。
加えて無形資産を価値創造の基礎とする時代では、貸借対照表の資産が企業
の境界を決める時代でない。ネットワーク企業ともいわれ、異なる企業の無形
資産を結合して一緒に価値を作る時代である。そこでは知的人材の重要性がま
すます大きくなっていくのであり、人的資本は貸借対照表の資産を基礎とする
株式会社法人が「所有」できないのである。これまで雇用してきた重要な人材の
流出は、蓄積してきた法人所有の組織資産を有効に利用する能力が大きく低下
し、会社は「ただの入れ物」となってしまう可能性が高くなっていく。その意味
では知識人本主義とも言うべき時代に入ろうとしている。資本は収益レバレッ
ジを求めて知識を需要する時代である。
このような視点からは、企業の価値創造力を見る視点は人的資本に焦点が当
てられよう。日本の場合でもすでにこの流れにある。企業では当然人的資本の
質、すなわち個人の能力に区別をしているが、社会的視点からは企業の社会性
だけが前面に出ているようである。
いずれにしても情報開示に関して、人的資本を含む無形資産の価値創造力や
変化の経営、戦略的リスク経営の重要性から見れば、非会計情報の開示は自然
の流れである。EU各国では、90 年代末以降企業の価値創造機能における無形
資産の重要性を認識し、無形資産についての研究調査成果の公表により理解を
共有化してきている。実際、白書が紹介しているように、北欧企業では実際に
開示しているし、デンマークのように無形資産を含めた企業情報開示法の制定
(2000)にまでコマを進めた国もある。英国では2005 年から企業の事業内容・
戦略、過去1 年の事業レビュー、将来の不確実性(顧客、仕入先、技術変化など)
などを示した企業活動財務報告書の公表が義務付けられる。
- 37 -
EU 文書でも、マクロ私的視点からレレバントな情報をふくむ報告書が必要で
あることを指摘し、無形資産の識別,測定,報告そして管理を適切に行うこと
ができるような適切な情報基盤の必要性を次のように述べている。
「これまでの自主的な情報公開制度は興味深い結果を提示してきたが,それ自
体を透明な情報環境に導くことはできなかったようだ。しっかりした経済原理
に基づき,広く標準的で,結局ある部分については強制的であるような,革新
的な報告のための情報基盤が求められている。経済のすべてのレベルの情報ニ
ーズを満たすために,この基盤はミクロとマクロ経済の場における代表者によ
って協力的に公表される必要がある。ここで代表者とは,証券市場監督者,会
計基準規制当局,政府でマクロ経済データ収集と政策立案に責任を持っている
ものをいう。
無形資産への投資は,この基盤整備が完了した場合にのみ最適化されるだろ
う.情報基盤は,無形資産の包括的な定義を提供する概念的枠組み(首尾一貫
した測定ルール,報告実施の信頼性を強化するための強制の仕組み)を基本と
していなければならない. その枠組みの目的は,投資家と政策立案者に企業パ
フォーマンス評価や企業統治の実際を監視するための情報を提供することであ
る.利害関係者は,(物理的資産に配分された部分だけでなく)資金全体の利用
状況や収益性に関する情報を欲している。」
しかし現在すべてが進化の過程にあり、その流れを理解する確固たる経済原
理を持ち合わせているとは思われない。情報基盤を作ってもその陳腐化が懸念
されるので、しばらくは無形資産に関して知識を増加させる情報収集のための
試行期間として企業の自主性・戦略性を考慮したソフトな誘導政策が重要であ
ろう。
6.3 情報開示に対するEU 文書の立場
EU 文書では、無形資産に関する情報開示のための内部・外部報告の規制と実
施についてのいくつかの自明でない次の問題を強調することに専念している。
(1) 企業の有形・無形資産への資源配分を決定する要因についてのさらに多くの
証拠が必要であること
(2) 企業の戦略的投資の意思決定様式と外部競争プロセスの関連性はまだ完全
に理解されていないこと
(3) 内部データ収集は,包括的な識別を許容する無形資産への投資管理のために
(平均的に)十分でないこと
(4) 外部に向けた財務報告書に関する規制は将来の利益を生みだすと予想され
- 38 -
る資源をすべて包含するように資産を定義するが、計測ルールの信頼性のた
めにほとんどの無形資産が除外される
(5) ミクロ経済データ(外部機関による財務データ)収集とマクロ経済統計デー
タ収集に責任を持つ個別の機関は,共通の概念のフレームワークあるいはデ
ータ収集ツールなしで独立して収集
それゆえにEU 委員会への提出文書は、無形資産を評価するための情報基盤開
発を支援する基準をEU に提供することを意図したものである、と述べている。
包括的な研究であるEU 文書が調査した文献の多くは,利害関係者に対する
財務情報開示の重要な役割を示すものである。その根本的な原因は,無形資産
のリスクと専有性の特性である。
1) 無形資産の定義と適切な測定についてのコンセンサスを得ることである.
企業ビジネスプロセスを位置づける具体例に基づいた研究がこのステッ
プの基本である。
2) 企業内部の情報システムもまた無形資産を日常的に捕らえるように,ま
たこうした資産が効率的に管理できるような企業内意思決定を支援する
ように設計する必要がある。
3) 無形資産の新しい報告の枠組みは,情報システムとデータに関する内部・
外部間のより強い結びつきへ向けた顕著な貢献ができるはずだ。全体で
は,内部からと外部からのデータ収集の整合性の欠如は,より適切な情
報を供給するための管理誘引機能が欠如していることであろう。
これらの視点を踏まえて、無形資産情報開示のための必要な議論として
A. 唯一の無形な組織基盤によって引き起こされた生産効率の改良を通じ
てもたらされる,国家経済と企業の成長の増強の問題.
B. 変化しつつある企業の性質と範囲の問題。閉じた形式としての法律的実
体から,重大な無形資産としての協力活動に焦点を当てる流れ,柔軟な提携
ネットワークおよびオープンシステムに至る企業の変質の問題。
C. 無形資産集約的な経済や企業の脆弱性リスクに関わる問題。これは、こ
のリスクの緩和のためのコントロール手段の必要性に関する問題.
D. 無形資産集約的経済における企業の役員,資本市場の投資家,公的政策
作成者の要求を満足するために必要な新しい情報構造の必要性に関する問

をあげて議論している。
これらの問題の基本は、豊かな社会での「無形資産の価値創造力が企業の本
質を変えていく」経済社会構造変化の問題である。その背後には、すでに述べ
たように、人々の選択プロセスが消費価値を無形資産複合体としての商品性へ
とシフトしていることがあげられよう。
- 39 -
6.4 無形資産情報開示問題
企業の社会的役割やEU 文書のマクロ的な視点を踏まえた上でも、実は情報開
示問題はそれほど単純でない。それは無形資産の属性に関わる問題と、企業の
私的位置付けに関わる問題があるからである。前者は、コピー可能性など直接
無形資産の属性に関わって、競争優位性を狙った無形資産投資が外部流出して
しまう可能性と、無形資産には非常に細かなイネブラー(可能子)が集まって
ひとつの価値発生能力持つものがありその認識可能性の問題である。たとえば、
マクドナルドの接客マニュアルはひとつの価値を生むものであるが、マニュア
ル自体を接客無形資産と認識するのが適当であろうが、その情報開示や他との
比較可能性は困難な問題であろう。
後者の問題はさらに重要な問題である。それは企業の社会的位置づけ(保有
形態)に関係している。情報開示の狙いは、私的自治を尊重しながら企業に安
定的な価値創造を可能にさせる規律とステークホルダーとのコミュニケーショ
ンのあり方を求めることであろう。その視点から見ると、無形資産に関する情
報開示問題を議論する場合において、区別すべき視点は、
1)競争環境において、企業の私的自治のもとに自己イノベーションによる価
値創造機能に関する視点、
2)投資家・消費者のリスクテイク機能とガバナンス機能を促進する視点
3)投資家と企業の関係を社会的価値創造関係の視点からみた国家の統制機能
に関する視点
であろう。実際、無形資産の情報開示問題を議論するときに、情報開示を求めら
れる企業の立場と、それを求める投資家・消費者(家計)の立場と国家の立場が
異なる。したがって、企業経営に関する情報開示をする相手として、企業内部、
企業外部に分けると同時に、外部について主体性を与えた自由なスタイルの情
報開示方式と、国の政策的な立場からそれをある標準化して定型的な情報開示
方式では決定的な違いがある。この後者の立場を求めるとすれば、実際可能に
なるのは分離可能な無形資産と企業のコンピテンシーを示す何らかの指標であ
ろう。分離不能な無形資産は、多くの場合非線形的に集合的に価値創造に貢献
するので、個別な開示で必ずしも価値創造能力の情報として理解するのが難し
いであろう。
まず1)に関する立場から見ると、企業内部に対しても外部に対しても情報
開示の戦略性の概念が関わる問題である。内部に関しては、多くの企業では最
近イントラネットとパスワードによって、マニュアル等の企業の組織資産情報
へのアクセス可能となっている。マイクロソフトではすべての従業員に会社の
重要な財務情報へのアクセス可能にして、内部情報仲介者によるバイアスや無
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駄な時間を避けさせることで効率を上げさせている。会社を理解させることが
リスクマネジメントのひとつとして理解している(バートンら(2003))。
他方、すでに述べたように、企業は社会とのコミュニケーションを通して関
係資産を作ることによって、それによって商品性を高めたりして価値創造をし
たり、また投資家から資金調達をしたり、あるいは優秀な人材を調達したり、
差別化可能なサプラーチェーンを構築したりする。いわゆるコーポレートイメ
ージとしてのブランドなどがこれにあたる。その意味では、絶えず情報発信す
るだけでなく、ステークホルダーからの情報を受信して、商品性や社会的責任
活動の有効性を高めてコポーレートブランドを構築していかざるを得ない。
情報開示政策の目的とそのあり方は、結果として社会全体の価値創造パフォ
ーマンスに違いをもたらす。政策当局からの情報開示政策は、広義の意味での
企業価値創造の最大化が大きな目的関数となろう。当然そこには、「企業の社会
的責任」活動から発生する価値なども、社会や消費者がそれを期待する限り、
その目的関数に含まれている。しかし、企業の価値創造プロセスは限りない多
様性を持ち、その多様性が差別化の一つの現れである。またそのビジネスモデ
ルは、業種、B to B、B to C、地域、文化などに関係して、無限の可能性を持っ
ている。ビジネスモデル自体が無形資産であり、異なるビジネスモデルの中で、
たとえば保有している資源が同じであっても、価値創造機能は大きく異なる。
企業はその存在目的のために競争優位性を求めて行動する。競争環境におい
ては、競争優位性こそが実は企業の生存を保証するものであり、その追求が企
業のみならず社会にイノベーションを引き起こし、結果として多くのステーク
ホルダーに価値をもたらす。政策当局から求められる情報開示は、この企業の
社会的イノベーション機能を否定するものであってはならない。特に無形資産
の場合、法的保護のある知的財産を除けばコピー可能である場合、企業間競争
においてその無形資産から発生する限界生産力がゼロになる可能性がある。そ
れゆえ、重要な部分において開示にディスインセンティブをもつ。これを尊重
しながら、競争環境の下で企業は自ら競って情報開示をしてコミュニケーショ
ンに勤めたくなるようなインセンティブとなる枠組ができるのが望ましい。そ
の情報開示の報告書の形式もそれぞれの無形資産経営の方式に基づいた工夫が
ある、知的コミュニケーションツールを開発していくのが、経営の情報開示と
して望ましいであろう。
現在、情報流出の問題が騒がれる中、企業は情報管理を強め、法的なライア
ビリティも高くなっているので、ますます無形資産情報のスピルオーバーがで
にくくなる一方、一旦流出すると瞬時に広く流れてしまう。
市場を通した私的自治を意識する米国では、1)と2)の関係を監査法人と証券
アナリストの役割で結合しようとしている(Sarbanes-Oxley 法)。他方、欧州、
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特に北欧を中心として、知的資本情報の開示として、知的・資源アプローチに
よる外部的な知的報告書の形を進めている。きわめて違うアプローチである。
今後どのように展開していくかは企業のステークホルダーとの戦略的なコミ
ュニケーションプロセスに関係する。プライス・ウォーター・クーパーハウス
(PWC)は、企業情報開示問題を投資家等外部からのニーズに対応してIR 活
動も含めて情報開示戦略を如何に考察していくかについて、その分析枠組を提
供している(PWC(2004))。これらの問題は第2部で議論する。
いずれにしても、重要な点は、「無形資産の認識に関わる問題」を企業価値創
造プロセスとその能力と結合しない限り、情報開示問題に対する有効な政策的
視点を欠くことになる。第2 部以下で更なる整理をし、有効な情報開示政策の
視点を探る。
第1 部参考文献
ここでは、本文で直接引用した文献のみを挙げる。
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